2012 年 15 巻 6 号 p. 756-759
山で採取したキノコを調理し,家族3人で食べたところ,約2時間後より全員が嘔吐を繰り返し,救急外来を受診した。臨床症状,持参したキノコの形状より,ツキヨタケによる中毒が推定された。輸液による対症療法を行い,嘔吐や倦怠感などの症状は軽快し,翌日,全員が退院となった。ツキヨタケはヒラタケやシイタケと形態が類似し,発育時期や発育場所も共通するため,毒キノコによる中毒のなかでは患者数が多い。通常は対症療法により数日で軽快するが,まれに重症例の報告もあることを念頭におき,注意深く経過観察を行うことが必要である。また,日常より集団発生や夜間発生した場合も含め,対応を検討しておくことが必要と思われる。