抄録
【要約】目的:当院では,2007 年に救命救急センターが本格稼働して以降,年々入院患者数が増加した結果,MRSA に代表される耐性菌検出件数が急増した。それに対し,2010 年4 月から医師,看護師,薬剤師,細菌室検査技師などから構成される多職種感染対策チーム (ICT)によるラウンドを開始した。本研究の目的は多職種ICT ラウンドがもたらす臨床的効果を明らかにすることである。方法:ICT ラウンドを開始した2010 年4 月から2012 年3 月において,ICT ラウンド開始前後における(1)耐性菌分離培養件数,(2)血液培養陽性件数, (3)各種抗菌薬の使用密度と緑膿菌に対する感受性を比較・検討した。結果:2 年間に1,381 名に介入を行った。ラウンド開始以降,血液培養陽性例のうち末梢輸液路感染の占める割合は,開始後1 年目に13.9%,2 年目は6.6% と有意に減少した(p<0.05)。また,緑膿菌の抗菌薬感受性は,特にImipenem/Cilastatin において開始前の70.5%から開始1 年後には87.3%に有意に改善した(p<0.0001)。また,入院患者数はその後も増加したが,MRSA 検出件数は,開始前には患者1,000人あたり2.0人から,1年後に1.1人,2年後に0.5人にまで減少した(p<0.05)。結語:多職種ICT ラウンドの導入は,MRSA 検出件数・血流感染の減少,抗菌薬適正使用化をもたらした。