日本臨床救急医学会雑誌
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17 巻, 1 号
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原著
  • 中井 夏子, 門間 正子
    2014 年17 巻1 号 p. 1-10
    発行日: 2014/02/28
    公開日: 2014/03/25
    ジャーナル フリー
    目的:救急看護師の職務継続の基礎資料として,北海道の救命救急センターに勤務する看護師を対象に,離職要因の1 つである蓄積的疲労の実態を横断的に調査し,性別,経験年数,所属施設の所在地,救急医療体制,所属部署,救急看護への志向ややりがいにより差異があるか否かを明らかにする。方法:北海道の救命救急センターに勤務する看護師を対象に郵送法で無記名自記式質問紙調査を行った。蓄積的疲労は,蓄積的疲労徴候インデックス(Cummulative Fatigue Symptoms Index)を使用し測定した。結果:救急看護師の年齢,看護師経験年数,救急看護経験年数は精神的側面の疲労に,性別は身体的側面の疲労に,救急看護にやりがいを感じているか否かは身体的,精神的,社会的側面の疲労に関係していることが明らかになった。また,勤務する施設の所在地が道央圏以外の看護師は社会的側面の疲労が低値であった。結論:救急看護師の蓄積的疲労は年齢,経験年数,性別,救急看護へのやりがい,地域間で相違があることが明らかとなり,看護師個々のキャリアに合わせた支援体制の構築が必要であることが示唆された。
  • 井上 信明, 三浦 英代, 清水 直樹
    2014 年17 巻1 号 p. 11-17
    発行日: 2014/02/28
    公開日: 2014/03/25
    ジャーナル フリー
    目的:当院では2011 年12 月よりCanadian Paediatric Triage and Acuity Scale(Paed CTAS)からCTAS 2008 へ院内トリアージの基準を変更した。そこでCTAS 2008 の小児患者における適用性を検証した。方法:2011 年4 月1 日より7 カ月間を移行前,同年12 月12 日から約6 カ月間を移行後とし,緊急度分類区分別の患者数や入院率などを比較した。結果:移行前の患者数は21,636 人,移行後は 18,361 人であった。移行後で有意に蘇生区分の患者が増多したが,蘇生区分の患者における入院率に差はなかった。また緊急度区分の高い群の方が高い入院率を認めた。カナダの小児病院における調査と比較すると,緊急度の高い区分では患者分布に差はなかった。結論:CTAS 2008 は本邦の小児患者に対しても適用できると考えられた。
  • ―第2報:受講前後における胸骨圧迫手技の変化―
    廣瀬 智也, 石見 拓, 呉 聖人, 瀬尾 恵子, 山本 紘司, 真野 敏昭, 藤野 裕士, 小倉 裕司, 嶋津 岳士
    2014 年17 巻1 号 p. 18-24
    発行日: 2014/02/28
    公開日: 2014/03/25
    ジャーナル フリー
    目的:大学病院非医療従事職員を対象に胸骨圧迫とAED 使用に特化した簡易型心肺蘇生講習会を実施し,その教育効果を調べること。対象・方法:2011年9月から2012年1月の間に受講した56 名に対し,胸骨圧迫とAED 実施に関する質問紙調査を行った。うち29 名の胸骨圧迫手技を客観的に評価した。結果:講習会前後で「反応の確認ができる」と答えた人が9 名(16%)から48 名(86%)(p<0.0001)に,「胸骨圧迫ができる」と答えた人が5 名(9%)から46 名(82%)(p<0.0001)に,「AED を使用できる」と答えた人が14 名(25%)から50名(89%)(p<0.0001)に増加した。また,胸骨圧迫回数が89.6 ± 31.0 回/ 分から107.8 ±16.3 回/ 分(p<0.01)に,圧迫中断時間が2.7 ± 6.2 秒から0.2 ± 0.7 秒(p<0.05)に,5cm 未満の不完全圧迫回数/ 総圧迫回数(%)は18.0 ± 31.8%から5.6 ± 19.0%(p<0.05)へと改善した。結語:簡易型心肺蘇生講習会により胸骨圧迫とAED を実施する自信が向上し,胸骨圧迫手技の技術が改善した。
  • 井上 貴昭, 中沢 武司, 麻生 恭代, 成田 久美, 秋田 美佳, 中村 美子, 石井 幸, 佐々木 信一, 田中 裕
    2014 年17 巻1 号 p. 25-31
    発行日: 2014/02/28
    公開日: 2014/03/25
    ジャーナル フリー
    【要約】目的:当院では,2007 年に救命救急センターが本格稼働して以降,年々入院患者数が増加した結果,MRSA に代表される耐性菌検出件数が急増した。それに対し,2010 年4 月から医師,看護師,薬剤師,細菌室検査技師などから構成される多職種感染対策チーム (ICT)によるラウンドを開始した。本研究の目的は多職種ICT ラウンドがもたらす臨床的効果を明らかにすることである。方法:ICT ラウンドを開始した2010 年4 月から2012 年3 月において,ICT ラウンド開始前後における(1)耐性菌分離培養件数,(2)血液培養陽性件数, (3)各種抗菌薬の使用密度と緑膿菌に対する感受性を比較・検討した。結果:2 年間に1,381 名に介入を行った。ラウンド開始以降,血液培養陽性例のうち末梢輸液路感染の占める割合は,開始後1 年目に13.9%,2 年目は6.6% と有意に減少した(p<0.05)。また,緑膿菌の抗菌薬感受性は,特にImipenem/Cilastatin において開始前の70.5%から開始1 年後には87.3%に有意に改善した(p<0.0001)。また,入院患者数はその後も増加したが,MRSA 検出件数は,開始前には患者1,000人あたり2.0人から,1年後に1.1人,2年後に0.5人にまで減少した(p<0.05)。結語:多職種ICT ラウンドの導入は,MRSA 検出件数・血流感染の減少,抗菌薬適正使用化をもたらした。
調査・報告
  • 高橋 哲也, 武居 哲洋, 伊藤 敏孝, 竹本 正明, 八木 啓一
    2014 年17 巻1 号 p. 32-37
    発行日: 2014/02/28
    公開日: 2014/03/25
    ジャーナル フリー
    背景:Spinal cord injury without radiographic evidence of trauma(非骨傷性頸髄損傷,SCIWORET)はわが国に多いが詳細な報告は少ない。目的:当院救急外来におけるSCIWORET の特徴を検討すること。対象と方法:頸椎・頸髄損傷91 例のうち,頸椎損傷のみは20例であった。頸髄損傷71例のうち単純X線とCTで頸椎に骨傷や脱臼がないSCIWORET は81.7% の58 例(年齢64.3 ± 14.7 歳,男性46 例,女性12 例)であり,その特徴を後方視的に検討した。結果:受傷機転は転倒30 例,転落15 例,交通外傷8 例,墜落5 例であり,65 歳以上では転倒・転落といった軽微なものが多かった(p<0.05)。頸椎X 線側面像で脊柱管狭窄およびretropharyngeal space( 咽頭後隙,RPS)拡大を認めたのはそれぞれ33 例(56.9%),17 例(29.3%)であった。脊柱管狭窄を認める割合はRPS 拡大群では4/17 例(23.5%)であったのに対し,RPS 正常群では29/41 例(70.7%)と有意に多かった(p<0.001)。結語:当院救急外来におけるSCIWORET は高齢男性の軽微な受傷機転により発症しており,頸髄損傷に占める頻度は過去の報告より多かった。SCIWORET において脊柱管狭窄を有する割合は,RPS 正常群では拡大群と比較し高値であった。
  • 原 直己, 津田 尚始, 永嶋 一貴 , 川嵜 英二, 松田 俊之, 豊田 隆
    2014 年17 巻1 号 p. 38-42
    発行日: 2014/02/28
    公開日: 2014/03/25
    ジャーナル フリー
    2011 年3 月11 日に起きた東日本大震災により東北地方は甚大な被害を受けた。それ以降,災害に対して積極的に取り組む医療機関が増えてきている。横浜労災病院は神奈川県にある災害拠点病院であり,薬剤部としても災害に対する取り組みを実践している。内容は,(1)院内災害訓練への参加,(2)薬学教育実務実習(以下,実習と略す)時の災害医療に関する講義,(3)患者を対象とした災害関連勉強会,(4)東日本大震災時,DMAT(Disaster Medical Assistant Team)業務調整員としての参加及び院外診療チームへの参加である。学生や患者への教育,災害時の医薬品の供給管理等,災害医療に関して薬剤師の関われる分野は多岐にわたる。特に実習での災害に関する講義は,災害医療を学ぶだけでなく,日常の薬剤師業務の重要性を再認識できる場としても非常に有益である。
  • 柏 健一郎, 大屋 聖郎, 中森 知毅, 木下 弘壽, 兼坂 茂
    2014 年17 巻1 号 p. 43-48
    発行日: 2014/02/28
    公開日: 2014/03/25
    ジャーナル フリー
    目的:横浜労災病院ER では患者の来院方法や重症度に関わらず全ての救急患者に対して救急専従医が対応する北米型ER 方式を行っている。そのため,救急専従医がNPPV を導入する機会が多い。そこで,当院ER におけるNPPV の実施状況について検討した。方法:2010 年4 月から2012 年3 月にNPPV を導入した61 例について後方視的に調査した。結果:疾患としては,急性心原性肺水腫が最も多かった。NPPV 導入の適応は守られていたが,禁忌項目に該当するものとして,重度の意識障害,血行動態不安定の症例が1 例ずつ含まれていた。NPPV 離脱成功率は83.0% であった。急性心原性肺水腫の成功率は88.2% であり,28 日後死亡率は2.94% であった。NPPV 導入後そのまま死亡した症例は5 例あり,その全てが侵襲的な加療を希望されていない症例への導入であった。結論:急性呼吸不全にNPPV は有効とされているが,特に急性心原性肺水腫では有用性が高い。NPPV は侵襲的な加療を希望されない症例に対して有効な場合がある。
  • 藤江 敬子, 下鳥 彩香, 安田 貢, 橋本 幸一, 中田 由夫, 水谷 太郎
    2014 年17 巻1 号 p. 49-55
    発行日: 2014/02/28
    公開日: 2014/03/25
    ジャーナル フリー
    目的:ウツタインデータ中に発生するエラーの種類と頻度を調査する。方法:茨城県A 市,B 市,およびC 市消防本部管内で2007 年1 月からの4 年間(B 市のみ3 年間)に発生した病院外心肺停止事例を対象とし,ウツタインデータ中のエラーの種類を分類するとともにエラー発生率を比較した。結果:3 市消防本部のデータからは欠損値,外れ値,矛盾値,およびウツタイン対象外としてA 市で108 件,B 市で86 件,C 市で22 件のエラーが発見され,エラー発生率はそれぞれ18.3%,11.5%,3.1% でC 市のデータ精度が最も高かった。このほかA 市では,「目撃なし」でありながら目撃日時が入力された事例が186 件あった。A 市のデータを傷病名等と照合すると,心肺停止推定原因に誤りのある例が56 件あった。結論:ウツタインデータのエラー発生率には消防本部間で大きな違いがあった。解析上重要なエラーも多数含まれており,このデータを用いた疫学研究の信頼性が懸念される。
  • 光定 誠, 石井 信一
    2014 年17 巻1 号 p. 56-61
    発行日: 2014/02/28
    公開日: 2014/03/25
    ジャーナル フリー
    【要約】高齢者施設の訪問診療医による適正な救急搬送を目的としたトリアージ基準を考案し,実施した。二次救急適応と医師が判断した場合には,搬送要請前に収容病院をできる限り選定した。12 施設,252 名を対象とした10 カ月間の救急搬送は46 例で,トリアージを行った 41 例は全例二次救急適応と判断した。うち39 例について収容病院を要請前に選定した。5 例は訪問医を介さず搬送され,うち2 例が三次搬送となった。本トリアージを包括的判断に基づき行うことで,本人や家族が望まない三次搬送や高度な処置をある程度回避できる可能性があると考えられた。地域の医療資源を熟知した訪問医が,患者全体像を把握したうえで収容先を搬送要請前に選定できれば,患者側および救急にも有益であると思われたが,困難なことも多かった。また急変時には訪問医を介さずに患者が搬送されうることも想定し,家族等との密なコミュニケーションをもとにスタッフに明瞭な指示を出しておくことが必要である。
  • 関本 裕美, 河合 実, 中蔵 伊知郎, 服部 雄司, 小西 大輔, 阿部 正樹, 本田 芳久
    2014 年17 巻1 号 p. 62-67
    発行日: 2014/02/28
    公開日: 2014/03/25
    ジャーナル フリー
    平成22 年4 月~24 年3 月の期間で,薬剤師がintensive care unit(ICU)の医薬品管理,薬物療法に介入することによる経済効果,薬物療法の適正使用に及ぼす効果を検証する。薬剤師の介入は,医薬品管理の専門家としての助言や指導を行うことでICU 定数保管医薬品数量,金額,算定もれを減少させ,また薬剤管理指導算定件数の増加をもたらした。薬剤管理指導の積極的実施前後では,在室日数の減少がみられたものの,有意な差がなかった。しかし,積極的実施期間1 年間で268 例(詳細調査期間3 カ月56 例)の薬物療法に介入し,患者の循環動態と使用薬剤の特性,使用方法,ガイドライン等を参考に医師へ処方提案を行い,約6 割は処方変更がなされた。ICU 看護師へのアンケートでは全項目の満足度平均は「4:満足した」との結果であった。ICU における薬剤師介入は多職種連携によるチーム医療の中で,経済効果,薬物療法の適正使用に寄与する可能性が示された。
症例報告
  • 菊田 正太, 廣田 哲也, 宇佐美 哲郎, 矢田 憲孝
    2014 年17 巻1 号 p. 68-72
    発行日: 2014/02/28
    公開日: 2014/03/25
    ジャーナル フリー
    症例は87 歳,女性。受診3 週間前より微熱を認め,1 週間前より血尿が出現した。2 日前よりレボフロキサシンを内服していたが,受診当日に意識障害を主訴に当院へ搬送された。初療時 JCS 200,血圧179/105mmHg,体温36.6℃で血中アンモニア値395μg/dl と高値を示した。尿閉に対する尿道カテーテルの留置により多量の血膿尿を排出し,尿はpH9.0 でグラム陽性桿菌を認めた。メロペネムの投与を行い,血中アンモニア値,意識は速やかに改善し,軽快退院した。尿培養でCorynebacterium urealyticum を同定したため,意識障害の原因はウレアーゼ産生菌感染症による高アンモニア血症と判断した。とくに排尿障害の基礎疾患を有する高齢者で高アンモニア血症を伴う意識障害を認めた場合,炎症所見が軽微であっても閉塞性尿路障害の有無を確認すべきである。さらに閉塞性尿路障害を解除して尿pH が高値の場合,必ず尿のグラム染色を実施し,グラム陽性桿菌を認めればグリコペプチド系抗菌薬の投与が理想である。
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