日本臨床救急医学会雑誌
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症例報告
自殺企図によるインスリングルリジンの大量注射で血糖降下作用が遷延した一例
三島 健太郎関井 肇井上 照大高橋 恵利香水野 慶子小松 孝之坂本 壮高見 浩樹野村 智久杉田 学
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2014 年 17 巻 4 号 p. 571-574

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抄録
症例は特記すべき既往のない40代の男性。自殺企図からインスリングルリジン合計300単位を皮下注射し,約12時間後に自宅玄関で倒れている患者を妻が発見して当院へ救急搬送された。来院時の意識レベルは200/JCSで血糖値14mg/dlと著明な低血糖を呈しており,ブドウ糖の経静脈的投与により速やかに意識清明となった。適宜血糖値を測定しつつ経静脈的投与または経口摂取によりブドウ糖投与を行った結果,血糖降下作用はインスリン皮下注射から少なくとも33時間遷延し,合計270gのブドウ糖投与を必要とした。自殺企図によるインスリン大量皮下注射の報告の中でも超速効型インスリン単独による症例はまれであり,グルリジンによるものは検索した限り本例が初である。インスリンが大量に皮下注射された場合は血糖降下作用の持続時間を予測しづらい場合が多く,慎重な経過観察が必要である。
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© 2014 日本臨床救急医学会
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