日本臨床救急医学会雑誌
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症例報告
来院時に急性冠症候群を疑う所見に乏しく低体温療法後に緊急経皮的冠動脈形成術を要した院外心停止の1例
佐藤 哲哉鈴木 秀明工藤 大介浅沼 敬一郎久志本 成樹
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2015 年 18 巻 5 号 p. 669-674

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抄録
急性冠症候群を原因とする心停止蘇生後患者に対する緊急冠動脈造影/経皮的冠動脈形成術が推奨されているが,適応判断とタイミングは明確ではない。今回,院外心停止蘇生直後には急性冠症候群を疑わせる所見に乏しく,低体温療法を施行,その後,再度心停止となり緊急冠動脈造影を要した症例を経験したので報告する。症例は60歳代の男性。血液透析へ行く準備中に心肺停止となった。救急隊到着時初期波形は心室細動であり,除細動を施行し,波形は無脈性電気活動へと変化,その後自己心拍が再開した。来院時,明らかな虚血を疑わせる心電図所見,心筋逸脱酵素の上昇はなく,心エコー上は全周性心筋肥大を認め,局所性収縮異常所見はなく,肥大型心筋症による心室細動と診断した。第6病日,再度心室細動となり,心エコーにおける前壁壁運動低下,広範なST低下を伴う心電図所見から急性冠症候群を疑い緊急冠動脈造影を施行し,冠動脈狭窄を認めた。来院時に急性冠症候群を示唆する所見に乏しい心停止蘇生後患者に対する緊急冠動脈造影の適応・施行時期に関し,さらなる検討が必要である。
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© 2015 日本臨床救急医学会
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