2016 年 19 巻 4 号 p. 604-608
症例は70歳代,男性。汎発性腹膜炎,重症敗血症状態で緊急開腹した。十二指腸球部前壁から下行脚にかけて大きな潰瘍穿孔と後腹膜(前腎傍腔)の感染を認めた。後腹膜を開放し,穿孔部を縫合閉鎖後,大網で被覆した。術後6日目突然腹腔内出血が生じ,CTで十二指腸周囲に気泡を含む後腹膜血腫を認め,止血を要する縫合不全のため再手術を施行した。後腹膜血腫を除去し,動脈性出血を止血した。穿孔部はほぼ全開状態で約3cm径であった。低侵襲的に閉鎖するため,空腸ループを結腸後で挙上し,穿孔部辺縁の十二指腸全層と空腸漿膜筋層を結節縫合して閉鎖した。軽度の縫合不全を生じたが良好に経過し,狭窄も生じなかった。空腸漿膜パッチ術は,十二指腸全層欠損に対して狭窄を来さずに閉鎖できる簡便な方法として,おもに外傷領域で選択されてきた。十二指腸潰瘍穿孔では報告が少ないが,縫合不全等で2回目以降の手術時に,オプションとして考慮してよい術式と考える。