2016 年 19 巻 4 号 p. 609-614
多数傷病者事故は局所災害であり,消防・医療ともに特別な対応が必要となる。また外国人傷病者は災害弱者として特別な配慮を要する。今回,われわれは外国人傷病者を含む多数傷病者事案を2例経験した。事例1:高速道路上での大型バス1台と大型トラック3台による事故であり,軽症11名,中等症1名,重症1名が生じた。軽症者11名中9名が中国人旅行者であり,分散搬送の困難さから,全傷病者を当院で受け入れた。事例2:一般道路上での大型バス2台による事故であり,軽症28名が生じた。患者は全員中国人旅行者であり,分散搬送の困難さから他院で9名,当院で19名を受け入れた。防ぎ得る災害死の回避のため,分散搬送は災害医療の原則である。しかし,外国人傷病者の場合,通訳者を考慮に入れない分散搬送は,適切な診療に結びつかない可能性がある。軽症の外国人傷病者に対しては,搬送先の集約化も考慮するべきと考えた。