1999 年 2 巻 3 号 p. 295-302
ヨーロッパ各国の救急体制はその内容が各国でかなり大きな違いが認められる。個人の考え方が明確なヨーロッパ社会であるが,古くから教会を中心とした病人の救護が行われていたこともあり,病院は弱者を救済するというキリスト教の基本精神に基づいて教会で修道士,修道女達によって行われた救護にその源を発している。ナイチンゲールや赤十字の創始者アンリジュナンの行為も博愛という同じ考え方に発している。現在でも赤十字や良きサマリア人連盟など種々の社会奉仕団体や宗教団体の救護活動がなされている。救急隊も公的な立場とボランテイアによる奉仕とがうまく混在関与して運営され,医師との共同作業もうまく行われている。本報告では,筆者がこれまで調査したことのあるドイツ,スイス,フランス,イタリアにおける救急隊の活動についてその概要を述べた。