近年のマラソンブームによる市民ランナーの増加に伴い心停止の発生報告は増加傾向にあるが,大会規模や開催場所によっては救護体制が万全でない大会も多い。山間部をコースとしながら約1万人参加する「いびがわマラソン」では,2009年までの約20年間約13万人の参加者で3例の心停止死亡症例が発生していた。このため,県内救急医療体制の指導的立場にある大学医学部附属病院がサポートする形で,メディカル委員会を立ち上げ,地域医師会,基幹病院,消防,警察,行政と救護体制の再検討を行った。不十分であったAEDの配置数の増加とコース内を巡回する自転車AED隊の配備で全コースをカバーしたところ,2010年から2015年までの6年間で2例の心停止が発生したがすべて社会復帰した。郊外型市民マラソン大会では救護体制構築が都市部の大会以上に重要であり,病院前救護体制や災害医療に習熟した救急医が加わることで,効率的な体制整備の実現が可能である。