2017 年 20 巻 5 号 p. 672-677
トラベルミン®は中枢性制吐薬および鎮暈薬として市販されており,成分は抗ヒスタミン薬のジフェンヒドラミンサリチル酸塩とキサンチン誘導体のジプロフィリンである。今回,致死量を超える量を内服した急性中毒例を経験した。症例:24歳男性。発熱,不穏状態のため当院に搬送され,口腔内乾燥,瞳孔散大,白血球高値,横紋筋融解を認めた。頭部CT,髄液検査,トライエージDOA®では異常所見を認めず,原因不明の意識障害として人工呼吸,血液浄化などの集中治療を行った。第2病日には意識清明となり,本人より市販のトラベルミン®を100錠内服したことを聴取した。その後,腎不全に陥ったが改善し第17病日に軽快退院となった。トラベルミン® による中毒例の報告は現在までに多くないが,近年インターネットの自殺サイトなどで服薬自殺が可能な薬剤として紹介されており,誰でも容易に購入可能であるため今後増加してくる可能性があり,中毒症状および治療法についての十分な認識が重要である。