日本臨床救急医学会雑誌
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20 巻, 5 号
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会告
原著
  • 小松 義孝, 田中 秀治, 櫻井 勝, 黒木 尚長, 櫻井 嘉信, 田久 浩志, 島崎 修次
    2017 年20 巻5 号 p. 631-637
    発行日: 2017/10/31
    公開日: 2017/10/31
    ジャーナル フリー

    目的:救急車を各走行条件のもと加速度が胸骨圧迫深度に与える影響と胸骨圧迫実施者の姿勢制御の効果を検討した。対象と方法:救急隊員の男性救急救命士,32人を対象に実験的研究を行った。実走行させた救急車内で胸骨圧迫を行い,直線,加減速,左右カーブで,胸骨圧迫実施者の体幹部を固定し姿勢制御した状態と非制御時の胸骨圧迫深度,リズム,胸骨圧迫位置,リコイルを比較検討した。走行中の救急車内における加速度は,加速度計を防振架台に設置し計測した。統計学的検討は各比較検討箇所で実施した5回分の胸骨圧迫時の比較項目平均値についてt検定と分散分析(p<0.05)を,また群間比較にBonferroni法(p<0.005)を用いた。結果:実施者の姿勢制御を行った群は非姿勢制御群に比べて,右カーブと減速で胸骨圧迫深度が有意に深くなった(p<0.05)。その他の評価項目に有意差はなかった。結論:実走行中の救急車内で胸骨圧迫実施者の姿勢制御をすることにより,右カーブと減速による影響が軽減され,深い胸骨圧迫が可能となった。

  • 田坂 健, 東恩納 司, 三上 奈緒子, 日野 隼人, 大川 恭昌, 武本 あかね, 河崎 陽一, 村川 公央, 北村 佳久, 千堂 年昭
    2017 年20 巻5 号 p. 638-643
    発行日: 2017/10/31
    公開日: 2017/10/31
    ジャーナル フリー

    目的:薬剤師が集中治療室に常駐し,積極的に塩酸バンコマイシン(以下,VCM)の治療薬物モニタリング(以下,TDM)介入を行うことによる効果を明らかにする。方法:薬剤師が常駐する前後で2群に分け,レトロスペクティブに調査を行った。結果:薬剤師の常駐によりVCM血中濃度測定実施率は86.2%から96.5%,シミュレーション解析実施率は24.1%から95.4%へ有意な増加を認めた。血中濃度分布は,トラフ値10μg/mL 未満の割合が24.1%から15.1%へ有意に減少した。一方でトラフ値20 〜25μg/mLの割合が3.7%から15.7%へ有意に増加していた。また,腎障害の発生率は6.5%から2.1%へ減少傾向を示した。結論:ICUにおいて専任薬剤師がVCMのTDM介入を行うことで,TDM実施率の向上とトラフ値が適正化され,VCM適正使用に貢献できることが示唆された。

  • 高橋 礼子, 近藤 久禎, 中川 隆, 小澤 和弘, 小井土 雄一
    2017 年20 巻5 号 p. 644-652
    発行日: 2017/10/31
    公開日: 2017/10/31
    ジャーナル フリー

    目的:大規模災害時には巨大な医療ニーズが発生するが,被災地内では十分な病床数が確保できず被災地外への搬送にも限界がある。今回,実際の地域での傷病者収容能力の確認を行うべく災害拠点病院の休眠病床・災害時拡張可能病床の実態調査を行った。方法:全災害拠点病院686施設に対し,許可病床・休眠病床・休眠病床の内すぐに使用可能な病床・災害時拡張可能病床についてアンケート調査を実施した。結果:回収率82.1%(許可病床258,975床/563施設),休眠病床7,558床/179施設,すぐに使用可能な休眠病床3,751床/126施設,災害時拡張可能病床22,649床/339施設であった。考察:いずれの病床使用時にもハード面・ソフト面での制約はあるが,被災地外への搬送に限界があるため,地域の収容能力を拡大するためには,休眠病床・災害時拡張可能病床は有用な資源である。今後,休眠病床の活用や災害拠点病院への拡張可能病床の普及を進めると共に,各種制約も踏まえた医療戦略の検討が課題である。

調査・報告
  • 宮安 孝行, 西海 哲也, 新井 純一, 古東 正宜, 石原 諭
    2017 年20 巻5 号 p. 653-660
    発行日: 2017/10/31
    公開日: 2017/10/31
    ジャーナル フリー

    目的:頸椎脱臼骨折に対する整復術を血管撮影室で施行し,コーンビームCT(CBCT)を用いて評価することの有用性を検証した。方法:1)臨床検討:血管撮影室で頸椎骨折に対する整復術を施行された26症例を対象とし,CBCTで整復不十分と確認された症例数を後方視的に調査した。2)観察実験:CBCTとX線CTで,血管塞栓術で使用されるコイルからのアーチファクトを比較した。3)線量比較:ファントムを用いて両装置での線量比較を行った。結果:1)CBCTで整復不十分と確認されたのは4例であった。このうち3例は下位頸椎の脱臼骨折症例であった。2)CBCTはX線CTと比較してコイル後面のアーチファクトが少なかった。3)ファントム中心での線量には大きな差は見られなかった。考察:下位頸椎の整復術ではCBCTを用いることで,透視画像のみで評価するよりも正確な評価が可能であった。CBCTはX線CTよりもコイル後面のアーチファクトが少なく評価がしやすいという有用性も認めた。

  • 〜DNARでも「予想しない死亡退院」を防ぐ〜
    佐藤 博, 田原 英樹
    2017 年20 巻5 号 p. 661-665
    発行日: 2017/10/31
    公開日: 2017/10/31
    ジャーナル フリー

    目的:マンパワーの少ない施設における院内急変対応システムRapid Response System(以下,RRS)導入後5年間の経過について報告すること。対象と方法:対象はRRS導入前の2011年度とRRS導入後の,2012〜2016年の当院の全入院患者。RRS導入前後の変化を検証するため,各年度の新入院患者1,000人当たりのコードブルー件数,死亡退院数および予想しない死亡退院数の推移を調べた。予想しない死亡退院は「死亡前に状態悪化の説明が無い場合」と定義した。結果:RRS導入でコードブルー件数,死亡退院数の減少は認められなかったが,予想しない死亡退院数は有意な減少(RRS導入前56.1→RRS導入1年目24.6,2年目18.5,3年目17.6,4年目14.8,5年目9.1)を認めた(p<0.01)。結論:マンパワーの少ない施設においても,RRS導入により予想しない死亡退院数を減らす可能性が示唆された。

症例・事例報告
  • 今村 友典, 小澤 博嗣, 河野 裕嗣, 金子 健二郎, 竹本 正明, 伊藤 敏孝
    2017 年20 巻5 号 p. 666-671
    発行日: 2017/10/31
    公開日: 2017/10/31
    ジャーナル フリー

    82歳の男性が吐血と意識消失で当院へ救急搬送された。来院時はショック状態で,身体所見から上部消化管出血と判断した。Computed Tomography(以下,CT)検査で十二指腸内に造影剤の漏出を2カ所認めた。血管造影検査で胃十二指腸動脈瘤と上腸間膜動脈の分枝瘤の同時破裂による出血を認め,コイル塞栓し軽快退院した。血管造影検査の所見から原因はSegmental Arterial Mediolysis(以下,SAM)と考えられた。わが国におけるSAMの同時破裂は過去に2例のみで,いずれも消化管内腔に出血した例はなく,きわめてまれな症例であり報告する。

  • 竹中 信義, 平川 昭彦, 加納 秀記, 津田 雅庸, 武山 直志, 服部 友紀
    2017 年20 巻5 号 p. 672-677
    発行日: 2017/10/31
    公開日: 2017/10/31
    ジャーナル フリー

    トラベルミン®は中枢性制吐薬および鎮暈薬として市販されており,成分は抗ヒスタミン薬のジフェンヒドラミンサリチル酸塩とキサンチン誘導体のジプロフィリンである。今回,致死量を超える量を内服した急性中毒例を経験した。症例:24歳男性。発熱,不穏状態のため当院に搬送され,口腔内乾燥,瞳孔散大,白血球高値,横紋筋融解を認めた。頭部CT,髄液検査,トライエージDOA®では異常所見を認めず,原因不明の意識障害として人工呼吸,血液浄化などの集中治療を行った。第2病日には意識清明となり,本人より市販のトラベルミン®を100錠内服したことを聴取した。その後,腎不全に陥ったが改善し第17病日に軽快退院となった。トラベルミン® による中毒例の報告は現在までに多くないが,近年インターネットの自殺サイトなどで服薬自殺が可能な薬剤として紹介されており,誰でも容易に購入可能であるため今後増加してくる可能性があり,中毒症状および治療法についての十分な認識が重要である。

  • 藤井 公一, 塚本 亮, 加瀬 建一, 宮武 諭
    2017 年20 巻5 号 p. 678-681
    発行日: 2017/10/31
    公開日: 2017/10/31
    ジャーナル フリー

    非外傷性腎被膜下血腫は,抗凝固薬使用中の患者や維持透析を受けている患者で発症することが多い。今回われわれは,救急外来を受診し保存的加療で軽快した2例の非外傷性腎被膜下血腫を経験した。1例目は75歳の男性で維持透析中の患者であり,突然の右腰背部痛で発症した。CTで腎被膜下血腫と診断し,保存的加療で軽快した。2例目は,心房細動に対しワルファリンを内服している80歳の男性で,左側腹部痛で発症した。貧血の進行を認めたため輸血を要したが,入院経過は良好であり安静にて軽快した。非外傷性腎被膜下血腫は,抗凝固薬使用による影響や腎囊胞の破裂が多いとされているが腎腫瘍からの出血の場合もあり,再発もみられるため厳重な経過観察が必要である。

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編集後記
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