2018 年 21 巻 5 号 p. 638-642
目的:日本蘇生協議会の『JRC蘇生ガイドライン2015』(以下,G2015)では,胸骨圧迫の速さと深さに上限の推奨値が示された。下限の推奨値のみだった『JRC蘇生ガイドライン2010』(以下,G2010)から変更されたことで,胸骨圧迫の習熟に変化が生じたか検討した。方法:対象は当院の研修医で,G2010で心肺蘇生を指導された25名(G2010群)と,G2015で指導された25名(G2015群)。両群とも指導の前後に胸骨圧迫を機器で測定し比較検討した。結果:G2010群21名とG2015群18名からデータを得た。G2015群ではガイドラインの推奨よりも胸骨圧迫が浅く速くなる傾向がみられ,各ガイドラインに準拠した胸骨圧迫の割合はG2010群と比べG2015群で有意に低下した。結論:G2015ではG2010と比べ,ガイドラインが推奨する速さと深さを順守した胸骨圧迫の実施に困難を伴うようになったおそれがある。