2018 年 21 巻 5 号 p. 680-684
脊髄硬膜外血腫はまれな疾患であるが,早期治療が良好な神経学的予後につながることから,急性の運動麻痺や感覚障害の症例では念頭に置くべき疾患である。一方,脊椎血管腫は良性脊椎腫瘍のなかでもっとも多い疾患であるが,微小外力による骨折を契機に脊髄硬膜外血腫をきたしたという報告は少なく,貴重な症例と考え報告する。症例:77歳女性。誘因なく背部痛,左下肢のしびれと脱力が出現した。来院時,上背部正中の疼痛 (Numerical Rating Scale ; 5/10),左下肢に徒手筋力テストで1/5の筋力低下,左体幹および左下肢に知覚鈍麻としびれを認めた。脊髄MRI所見より,C7脊椎血管腫部の骨折によるC7 〜T3脊椎高位の脊髄硬膜外血腫と診断した。このため直ちに椎弓切除術,硬膜外血腫除去術を施行し,術後は神経学的後遺症なく退院となった。