日本臨床救急医学会雑誌
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症例・事例報告
脳梗塞治療を通じて,離島における遠隔医療と搬送課題解決の必要性を痛感した1例
小林 晃多田 昌史橋口 昭大宮上 寛之横田 勝彦
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2019 年 22 巻 3 号 p. 536-539

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抄録

症例は75歳,女性。鹿児島県の離島で突然の意識障害,痙攣を認め,当院に救急搬送され, 発症90分後に施行したMRAで脳底動脈閉塞症と診断された。脳底動脈閉塞症は保存的にみると予後不良であり,血行再建を行わないと死亡率が80 〜90%に達する。当院から搬送可能な沖縄県の脳卒中専門施設の専門医にコンサルテーションしたところ,発症から4.5時間以内に搬送できないため,直ちにrt-PAを投与するように推奨され, rt-PAを投与して神経学的所見の改善をみたが,遠隔医療と搬送に課題を見出した。rt-PA静注療法は,実施率に大きな地域格差が存在し,医療過疎地域では専門医不足と地理的条件からその実施は困難なことが多い。当院のような脳卒中専門医の常駐していない離島は,遠隔脳卒中診療(telestroke)システムを活用した急性期脳卒中診療の構築が喫緊の課題である。

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© 2019 日本臨床救急医学会
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