日本臨床救急医学会雑誌
Online ISSN : 2187-9001
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22 巻 , 3 号
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会告
総説
  • ―医療の機能分化と連携,地域包括ケア推進のもとで―
    有賀 徹, 塚川 敏行
    原稿種別: 総説
    2019 年 22 巻 3 号 p. 429-435
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/06/30
    ジャーナル フリー

    救急医療の出口問題は,高齢の救急患者が治療を経て症状の安定を得ても,退院後に入浴,食事などの介護が受けられない,家族の協力が得られないなどの社会的な理由がもっぱらである。そのような事情のゆえに,急性期から地域包括期ないし慢性期へと患者の流れが円滑になされているとは言い難い。慢性期は長期にわたる医療と介護の一体的な提供が必要で,地域包括ケアシステムと称するネットワークの充実が求められる。また,地域包括期以降の中心は,訪問看護ステーションなどを有する,いわゆる地域密着型病院や回復期リハビリテーション病院などである。急性期からこれらへの円滑な流れは,地域包括期から慢性期への円滑な流れがあってこそ実効あるものとなる。後者は地域包括ケアシステムに与る諸機能が充実したネットワークとして作動している必要がある。地域密着型病院,回復期リハビリテーション病院などはこのネットワークの充実に深くかかわることが期待される。

原著
  • 山田 晃弘, 大保 勇, 住田 知隆, 大森 健太郎, 山口 均
    原稿種別: 原著
    2019 年 22 巻 3 号 p. 436-441
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/06/30
    ジャーナル フリー

    はじめに:われわれは,診療放射線技師が頭部CT 撮影時に入室からポジショニングまでの間に簡易的に脳卒中の評価を行うCT撮影時脳卒中スケ−ル(computed tomography stroke scale;CTSS)を考案した。目的:CTSSの精度について検証する。対象と方法:共同研究施設の3施設において2015年4〜10月までに救急外来を受診して頭部CT撮影を施行された1,575症例中,既往に脳梗塞がある症例や外傷症例,意識レベルが悪い評価不能症例を除外し,さらにISLSプロバイダー資格を有する技師6名が評価した324症例に対してCTSSの精度を評価した。結果:CTSSの感度は78.4%,特異度は95.2%,陽性的中率は87.4%,陰性的中率は91.1%を示した。結語:考案したCTSSは感度,特異度ともに精度の高い脳卒中スケ−ルであり,臨床運用できる可能性が示唆された。

  • ―高齢者福祉施設職員を対象とした検討―
    田島 典夫, 畑中 美穂, 青木 瑠里, 井上 保介
    原稿種別: 原著
    2019 年 22 巻 3 号 p. 442-448
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/06/30
    ジャーナル フリー

    本研究では,高齢者福祉施設職員を対象にBLS(basic life support;BLS)に伴うストレス反応を調査し,ストレス反応およびその後の救助意欲を規定する要因を検討した。A市内の全高齢者福祉施設職員に対して悉皆調査を行い,利用者の心停止現場に遭遇した経験をもつ360名を分析対象としたところ,約9割から何らかのストレス反応が回答された。BLS経験後のストレス反応の規定因を重回帰分析によって検討した結果,BLSの手技に関する不安と非救命例でのBLS実施事案がストレス反応を規定していた。また,BLS経験後の救命に対する態度の規定因をロジスティック回帰分析によって検討した結果,BLSへの関与人数が2人以下の場合,また,BLS後のストレス反応が重い場合ほど,その後の救助意欲が消極的になることが示された。これらの結果を踏まえ,バイスタンダーのストレス対策の重要性が議論された。

  • 須﨑 真, 宮内 雅人, 小原 俊彦, 兵働 英也, 柴田 泰史, 川井 真, 安武 正弘, 横田 裕行
    原稿種別: 原著
    2019 年 22 巻 3 号 p. 449-454
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/06/30
    ジャーナル フリー

    ERにおけるパニック値報告の臨床的意義を明らかにするため,緊急度トリアージとの関連性を検討した。2016年1〜12月に当院パニック値報告1,193例中,救急・総合診療センター初診患者54例の年齢,性別,来院方法,緊急度トリアージ(JTAS),報告時間帯,疾患分類を調査した。初診患者10,095例中,パニック値報告54例(男性33例,女性21例),平均年齢61±22歳であった。来院方法は救急車53.7%,walk in 46.3%。JTASでは蘇生1.9%,緊急18.5%,準緊急61.1%,低緊急16.7%,非緊急1.9%,報告時間帯は日勤46.3%,夜勤53.7%であった。疾患別に消化器27.8%,内分泌20.4%,血液18.5%,感染症9.3%,腎・泌尿器9.3%であった。一次・二次救急患者のパニック値報告例では緊急度の幅が広く,低緊急レベルの中に重症が含まれることもあり注意を要する。

  • ―Chest Compression Fractionに着目した分析―
    木村 信広, 中尾 彰太, 月木 良和, 萬田 将太郎, 松岡 哲也
    原稿種別: 原著
    2019 年 22 巻 3 号 p. 455-461
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/06/30
    ジャーナル フリー

    心停止症例に対する機械的CPRは,『JRCガイドライン2015』で胸骨圧迫の継続が困難な状況などにおける質の高い用手胸骨圧迫の代替手段として活用を提案されるなど,とくに傷病者の移動時や救急車の走行中の不安定な状況下における質の高い胸骨圧迫の継続が可能なデバイスとして期待されている。筆者の所属する消防機関では,CPA傷病者に対する病院前心肺蘇生中の胸骨圧迫中断時間の短縮を目的に,機械的CPR装置を導入しており,今回,実搬送症例データを基に機械的CPRの有用性を検証した。2013年1月からの3年6カ月間に,当消防本部の救急隊が対応した内因性院外心停止症例172例を,機械的CPR実施群107例と用手的CPR実施群65例に分けて比較分析した結果,機械的CPR実施群では用手的CPR実施群に比し,自己心拍再開率および社会復帰率に有意差を認めなかったが,Chest Compression Fraction(CCF)と特定行為実施率が有意に高かった(CCF;79.7% vs. 73.1%,p<0.01,特定行為実施率;43.9% vs. 24.6%,p<0.05)。欧米と比較して早期搬送が優先されるわが国の病院前救護体制においては,CCF改善とマンパワー確保の観点から,機械的CPRは有用である。

  • ―年齢と脈拍数を用いた修正qSOFAは認知障害患者の重症度評価に有用である―
    廣田 哲也, 北村 充, 柳 英雄, 朴 將輝, 安部 嘉男
    原稿種別: 原著
    2019 年 22 巻 3 号 p. 462-468
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/06/30
    ジャーナル フリー

    目的:二次救急医療機関の感染症患者に対するqSOFAの予後予測能を検証し,認知障害を有する患者に対する意識を除いた簡便なprediction ruleを構築する。方法:当院に入院した18歳以上の肺炎,胆道感染症,尿路感染症(計500例)を対象にqSOFA,SIRSと院内死亡(35例)の関連を検討した。結果:全院内死亡に対するqSOFAのc-statisticは0.75でSIRSのc-statistic:0.61より高かった。認知障害を有する223例において意識を除いたqSOFA(2点)に年齢≧80 歳(1点),脈拍数≧110/分(1点)を加えたm-qSOFA(計4点)の院内死亡に対するc-statisticは0.80であった。結論:qSOFAの予後予測能はSIRSより優れていた。年齢,脈拍数を用いたm-qSOFAは意識の評価が困難な認知障害を有する患者の重症度評価に有用である。

  • 大西 新介, 小野寺 良太, 杉浦 岳, 高橋 宏之, 近藤 統, 岡本 博之, 大城 あき子, 清水 隆文, 森下 由香, 奈良 理
    原稿種別: 原著
    2019 年 22 巻 3 号 p. 469-474
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/06/30
    ジャーナル フリー

    目的:消防覚知段階の情報から墜落外傷のトリアージが可能か検討する。方法:2003年4月からの4年間に当院へ救急搬送された墜落外傷症例を導出コホート,検証コホートに分けて後方視的に調査した。まず墜落高の重症外傷(ISS≧25)予測能についてROC解析を行った。次に重症予測にかかわる因子の多変量解析を行い,スコアリングを作成し検証した。結果:導出コホート111例において墜落高の重症予測能はAUCが0.65であり,墜落高の閾値は4mとなった。多重ロジスティック解析では高所,高齢,受傷時の意識障害が独立した重症予測因子であった。それぞれの因子を1点としたスコアリングを用いるとAUCが0.76となった。検証コホート128例においてもAUCは0.77であった。結論:墜落外傷においては,墜落高だけではなく高齢,受傷時の意識障害の情報を付加することでより正確なトリアージが可能となる。

  • 高橋 哲也, 藤澤 美智子, 土井 賢治, 永田 功, 中山 祐介, 武居 哲洋
    原稿種別: 原著
    2019 年 22 巻 3 号 p. 475-480
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/06/30
    ジャーナル フリー

    目的:当院で手術対象となった壊死性軟部組織感染症の臨床的特徴を検討すること。 対象:2006年4月1日〜2018年9月30日に軟部組織感染症で手術を施行した症例のうち組織に壊死性変化を認めた症例を対象とし,その特徴を後方視的に検討した。なお初回手術は壊死組織の完全除去を目的としたdebridementではなく感染部位を切開洗浄する方法を行っている。結果:33例が対象となり,来院から切開までの時間は1時間以内が18例(54.5%)と最多であった。切開後の創部は20例で自然閉鎖または縫合で軽快し,植皮術は10例,肢切断は3例に施行された。入院死亡は8例(24.2%)であった。体幹部感染は死亡症例の全例で認められ,ロジスティック回帰分析で死亡の独立危険因子であった(オッズ比29.0,95%信頼区間1.09-771,p<0.05)。結論:壊死性軟部組織感染症に対する初回にdebridementを施行しない切開法は,来院後きわめて迅速に施行されていた。死亡率は24.2%で,体幹部感染が死亡の独立危険因子であった。

調査・報告
  • 田口 裕紀子, 城丸 瑞恵, 澄川 真珠子, 成松 英智
    原稿種別: 調査・報告
    2019 年 22 巻 3 号 p. 481-492
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/06/30
    ジャーナル フリー

    背景・目的:プレホスピタルケアは救急患者の転帰を左右するため,救急救命士には資格取得前から取得後も病院実習が義務づけられている。実習項目は看護から習得できるものが多く,指導医師の不足などから看護師が実習指導に携わる施設は多い。そこで看護師による救急救命士の病院実習指導の現状を明らかにするため質問紙調査を行った。方法:救急救命士の病院実習指導に携わる全国の救命救急センターに勤務する看護師490名に質問紙調査を実施。結果:実習教育プログラムがない,または不明確と認識している者は63.8%,実習の説明を受けていない者は69.2%であった。また,救急やプレホスピタルに関する資格・経験がない者は実習指導について十分に把握していない傾向にあった。考察:救急救命士の病院実習の充実化のためには,指導に携わる看護師が実習目標や指導内容を把握できるような体制整備や臨床経験の少ない者への支援など実習指導体制構築の必要性が示唆された。

  • 齋藤 靖弘, 成田 拓弥, 徳留 章, 早坂 敬明, 松田 律史, 民谷 健太郎, 増井 伸高, 松田 知倫, 武田 清孝, 瀧 健治
    原稿種別: 調査・報告
    2019 年 22 巻 3 号 p. 493-498
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/06/30
    ジャーナル フリー

    救急外来(emergency room;ER)における薬剤師の業務報告は未だ少ない。この原因には診療報酬上の加算がない以上に,ERでの薬剤師業務が明確ではないことが考えられる。 今回,札幌東徳洲会病院(以下,当院)のER専従薬剤師が行っている業務として「持参薬鑑別」を取り上げ,その迅速性・内容・時間の観点から調査・検討を行った。結果として,ER専従薬剤師の施行した持参薬鑑別は救急搬入後2時間以内にほぼ終了していた。また薬剤起因性疾患の原因となり得る薬剤を常用している患者が一定数存在した。さらにER専従薬剤師は救急医の薬歴把握にかかる業務負担を1日当たり1.9時間軽減している可能性が示唆された。 以上の結果より,ERに薬剤師を専従配置することは,迅速な持参薬鑑別をER専従薬剤師が行うことでタスクシフティングによる救急医の負担軽減のみならず,薬剤起因性疾患の早期診断支援につながる可能性がある。

  • 池上 徹則, 則安 俊昭, 福岡 敏雄, 中尾 篤典, 荻野 隆光, 實金 健, 森本 直樹, 桐山 英樹, 藤原 俊文, 氏家 良人
    原稿種別: 調査・報告
    2019 年 22 巻 3 号 p. 499-506
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/06/30
    ジャーナル フリー

    岡山県の消防は政令指定都市から過疎地域までさまざまな背景をもった14の消防機関から成り立っている。県は2016(平成28)年10月にICTを用いた新たな救急搬送システムを導入し,開始から3カ月後の12月に医療機関と消防機関に対して利用状況のアンケートを実施した。その結果,応需情報共有機能や搬送実績共有機能など有用と考えて導入された機能が,消防にも医療機関でも十分に活用されているとはいえず運用方法またはシステムの仕様に改善の余地があることがわかった。とくに医療資源の乏しい中小の消防機関においてその傾向は顕著であり,今後は地域ごとの実情に応じた持続可能なシステムへの改変を進めるとともに,緊急度判定支援機能や傷病者情報送信機能の導入整備,管轄外搬送する際の基準作りを進め,新救急搬送システムが病院前から始まる救急医療体制整備に有効活用できるよう,検討を継続していく必要がある。

  • 市川 元啓, 池上 徹則
    原稿種別: 調査・報告
    2019 年 22 巻 3 号 p. 507-512
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/06/30
    ジャーナル フリー

    背景:岡山県第2の都市である倉敷には多数の用水路があり,市内では転落外傷や溺水で多くの患者が搬送されているが,被害状況を明らかにする調査はなされたことがなかった。われわれは倉敷市消防局の協力を得て市内全域で用水路転落の被害を明らかにするための調査を行った。方法:2015年11月〜2016年1月の3カ月間に市内で発生した用水路転落による救急要請を全例対象とし年齢,性別,受傷機転,受傷時間,重症度を調査した。結果:対象期間中に発生した用水路転落による救急要請は35例,半数近くの17例は65歳以上であった。受傷機転では自転車がもっとも多く,次いで歩行者であった。半数以上の18例は夜間の受傷であった。多くは軽症例だったが重症例も3例,死亡例も3例あった。死亡例はいずれも院外心肺停止症例で2例は溺水,1例は頸髄損傷が死因であった。結語:倉敷市では多くの用水路転落症例が発生しており予防のための対策が急務である。

  • 細川 康二, 西田 優衣, 吉野 雅人, 岸田 正臣, 久保 富嗣, 山賀 聡之, 志馬 伸朗
    原稿種別: 調査・報告
    2019 年 22 巻 3 号 p. 513-516
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/06/30
    ジャーナル フリー

    背景:広島市消防局では,心停止傷病者で主治医から心肺蘇生を行わない(DNAR)よう指示されれば蘇生処置を中止する運用がされてきた。本調査の目的は,現状を把握し課題の有無を明らかとすることである。方法:2015年4月からの2年間,同局管内で医療機関搬送までに蘇生処置中止希望が表明された心停止傷病者について,救急救命処置録等の情報を解析した。結果:対象は38例であった。蘇生処置中止希望は文書で1例,ほかは口頭で確認され,87%で主治医か主治医の属す医療機関の医師から確認された。医師よりDNAR指示が出されたのは63%であり,37%で主治医が現場に出向するため不搬送となった。結語:広島市消防局において救急要請後に蘇生処置中止希望が確認される事例では,蘇生処置の中止希望は文書で確認された1例を除くすべてが口頭で確認され,約6割で医師よりDNAR指示が出されていた。救急要請される背景をさらに調査し対策する必要がある。

  • 徳永 健太郎, 尾田 一貴, 岡本 真一郎, 右山 洋平, 川口 辰哉, 蒲原 英伸, 山本 達郎, 藤井 一彦
    原稿種別: 調査・報告
    2019 年 22 巻 3 号 p. 517-521
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/06/30
    ジャーナル フリー

    背景:抗菌薬適正使用として狭域経口抗菌薬が処方できる環境を整えることは,耐性菌出現を抑制するために重要である。目的:時間外外来における経口抗菌薬の配置状況を明らかにする。方法:時間外処方せんに薬剤師が対応していない施設を対象とし,郵送によるアンケートにより調査した。結果:配置薬がある14施設のすべてにおいて,「AMR対策アクションプラン」で削減すべきとされた広域の経口抗菌薬である第3世代セファロスポリン系薬とフルオロキノロン系薬が配置薬に含まれていた。一方,『抗微生物薬適正使用の手引き』で使用が言及されていたペニシリン系薬および第1世代セファロスポリン系薬の配置は,それぞれ9施設(64.3%),3施設(21.4%)に留まっていた。結論:時間外外来における経口抗菌薬の配置状況は,抗菌薬適正使用を推進するために改善の余地があると考えられた。

  • 土井 光則, 岩城 久弥, 柴田 尚明, 加藤 正哉
    原稿種別: 調査・報告
    2019 年 22 巻 3 号 p. 522-526
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/06/30
    ジャーナル フリー

    和歌山県立医科大学附属病院では2003年1月からドクターヘリを運行しており,一般的な救急医薬品のみを携行し,現場で処置を行った後に医療機関へ搬送していた。しかし出動先で,迅速な気管挿管や救急処置を要する場合,麻薬や筋弛緩薬の投与ができればより効率的な救急診療が可能であるとのフライトドクターの要望により,救急担当薬剤師という立場でこれらの薬剤の管理方法や運用方法を考えた。薬剤の特性に基づいて携帯ケースを用意したり,持ち出し管理表を作成するなど,救急医療の現場において救急に特化した薬剤師が関与することで,救急医療の質の向上につながったと考える。

症例・事例報告
  • 林 哲也, 酒井 智彦, 塩崎 忠彦, 廣瀬 智也, 村井 勝, 大浜 誠一郎, 上田 宜克, 越智 聖一, 大西 光雄, 嶋津 岳士
    原稿種別: 症例・事例報告
    2019 年 22 巻 3 号 p. 527-531
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/06/30
    ジャーナル フリー

    救急活動における傷病者の観察では,経皮的血中酸素飽和度(pulse oximetric saturation,以下SpO2)が測定不能な場合がある。救急現場における脳内局所酸素飽和度(regional saturation of oxygen,以下脳内rSO2)の有用性の検討を開始したところ,状態の悪化がとらえられたと考えられる1 例を経験したので報告する。症例は40代女性。救急隊接触時,意識レベルJapan Coma Scale(JCS)-3,心拍数160回/ 分,SpO2は測定不能であった。 しかし,脳内rSO2は64%と低値を示し,病院到着時までに意識レベルがJCS-10に低下し,脳内rSO2も病院到着までに59%へ低下するのが確認できた。救急現場においてSpO2による傷病者のヘモグロビンの酸素飽和度を評価できない場合,脳組織のヘモグロビンの酸素飽和度を評価することは有用であると考えられた。

  • 川口 竜助, 後藤 安宣
    原稿種別: 症例・事例報告
    2019 年 22 巻 3 号 p. 532-535
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/06/30
    ジャーナル フリー

    背景:近年,CT撮像機会の増加などにより臨床現場において脊柱管内気腫を目にする機会が増えていると推察される。症例:49歳,男性。約2mの側溝に落ち救急搬送された。 胸部CTにて左背側中心の皮下気腫,多発肋骨骨折および第5/6胸椎レベルの脊柱管内気腫を認めていたが,胸部外傷に随伴する気腫であり硬膜外気腫と考え経過観察した。その後,気腫による神経症状の出現はなく第9病日に脊柱管内気腫は消失した。結語:硬膜外気腫については文献的にも「神経症状の出現はまれ」とする報告が多いが,なかには症状を認める場合もあることを念頭に置き,経過観察する必要がある。

  • 小林 晃, 多田 昌史, 橋口 昭大, 宮上 寛之, 横田 勝彦
    原稿種別: 症例・事例報告
    2019 年 22 巻 3 号 p. 536-539
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/06/30
    ジャーナル フリー

    症例は75歳,女性。鹿児島県の離島で突然の意識障害,痙攣を認め,当院に救急搬送され, 発症90分後に施行したMRAで脳底動脈閉塞症と診断された。脳底動脈閉塞症は保存的にみると予後不良であり,血行再建を行わないと死亡率が80 〜90%に達する。当院から搬送可能な沖縄県の脳卒中専門施設の専門医にコンサルテーションしたところ,発症から4.5時間以内に搬送できないため,直ちにrt-PAを投与するように推奨され, rt-PAを投与して神経学的所見の改善をみたが,遠隔医療と搬送に課題を見出した。rt-PA静注療法は,実施率に大きな地域格差が存在し,医療過疎地域では専門医不足と地理的条件からその実施は困難なことが多い。当院のような脳卒中専門医の常駐していない離島は,遠隔脳卒中診療(telestroke)システムを活用した急性期脳卒中診療の構築が喫緊の課題である。

資料
  • 岡本 潤, 片山 祐介, 北村 哲久, 佐道 准也, 中尾 彰太, 新田 雅彦, 石見 拓, 藤見 聡, 鍬方 安行, 松岡 哲也
    原稿種別: 資料
    2019 年 22 巻 3 号 p. 540-550
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/06/30
    ジャーナル フリー

    目的:救急搬送傷病者に関する消防機関および医療機関で記録されたデータを地域網羅的に個別事例単位で統合したORIONシステムの登録データについて記述疫学的に報告する。 方法:2015年1月1日〜2016年12月31日までに発生した救急搬送傷病者を対象に,ORIONシステムに登録されたデータを集計し,傷病者背景について記述疫学的に集計した。結果:1,151,786例が登録され,うち753,301例を解析対象とした。初診時転帰は,入院39.7%,外来帰宅58.2%,転院1.1%,死亡1.0%であった。初診時診断は,損傷・中毒およびそのほかの外因疾患がもっとも多かった(26.2%)。21日後転帰は,入院中が29.2%,退院が59.0%であった。 確定時診断は循環器系疾患がもっとも多かった(20.3%)。結論:ORIONシステムに登録されたデータを用いて,救急搬送傷病者の実態を記述疫学的に明らかにした。

編集後記
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