2019 年 22 巻 4 号 p. 646-650
症例は40歳代男性,起床時に首を動かしたときに右後頸部に激しい痛みを自覚した。 数日間,内服薬なしで経過観察していたが症状改善がみられず病院を受診した。血液検査でWBC 9,630/μL,CRP 11.68mg/dLと上昇しており,咽後膿瘍の疑いで福岡徳洲会病院(以下,当院)へ紹介となった。咽頭後壁のリンパ節腫脹がないことや,当院搬入後の頸部単純CTで環軸椎前方に微細な石灰化が考えられる高吸収域を認めることから,咽後膿瘍の可能性は低く,石灰沈着性頸長筋腱炎の可能性が高いと判断した。石灰沈着性頸長筋腱炎はまれな疾患であり,咽後膿瘍と類似する点が多い。本症例も経過中,炎症の再燃を認め,頸部造影CT検査で低吸収域の周囲が造影され咽後膿瘍が疑われ,緊急穿刺ドレナージを施行したが吸引された液体は膿状ではなく,漿液性の液体であった。最初の発症から約2 週間は抗菌薬を投与することなく消炎鎮痛薬のみでいったんは症状が軽快したこと,またドレナージ液の所見から本症例は石灰沈着性頸長筋腱炎と診断した。急激な頸部痛の際は本疾患を鑑別疾患の一つとして想起することが重要である。