日本臨床救急医学会雑誌
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症例・事例報告
100回近い刺傷歴を語る患者に 初めて発症したアナフィラキシーショックの1例
田中 保平藤原 慈明渡邊 伸貴山黒 友丘富永 経一郎新庄 貴文太田 真伊澤 祥光米川 力間藤 卓
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2020 年 23 巻 1 号 p. 58-61

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抄録

75歳,男性。ハチ酒造りを趣味とし,これまで多数回のハチ刺傷歴があるが症状を呈したことはなかった。某日スズメバチに両肩を2カ所刺傷された後,意識消失した。血圧低下・頻呼吸・全身の膨疹を認め,アナフィラキシーショックとしてアドレナリンを筋注され当院に搬送となった。病着したとき,呼吸・循環動態は安定していたため,経過観察を目的に入院し翌日に退院した。ハチ刺傷によりアナフィラキシーショックをきたすことはよく知られ,通常は2度目以降の刺傷により発症率が増加すると思われる。一方で複数回の刺傷において無症状であればその危険性は低下していると考えられやすい。しかし本症例は多数回の刺傷歴があるものの無症状で経過し,今回に限りアナフィラキシーを発症した。残念ながらその機序を説明する所見を得ることはできなかったが,このような症例が存在することの重要性に鑑みここに報告する。

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