2020 年 23 巻 2 号 p. 75-82
多死社会のなか,高齢者のQOL(quality of life)だけでなく,最近はQOD(quality of death)の重要性が強調されるようになった。しかし,在宅医療や介護を受けている高齢者が既存の疾病により予想された状態変化が生じた場合であっても,家族や介護者等は救急車を要請してしまう事例が多いことは日常の救急診療に携わっている医師や看護師であれば少なからず経験している。その結果,家族や介護者と救急隊,救急医療機関の医師や看護師等の医療スタッフの間にはさまざまな課題が発生し,何よりも患者本人にとって望まない医療が展開されることになる。このような事例に関する全国消防本部の調査では,その対応はさまざまであることが判明した。一般社会に対するACPや事前指示書の普及のための啓発活動が重要であり,消防本部もそのような場合の活動基準を作成しておく必要があると考える。