日本臨床救急医学会雑誌
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調査・報告
新たな入院時監視培養の試みと現状
福岡 京子石田 浩美山内 真澄深川 敬子花田 浩之倭 正也
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キーワード: 監視培養, 感染対策, 耐性菌
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2020 年 23 巻 5 号 p. 685-690

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抄録

感染が成立するには,①感染経路,②病原体,③宿主の3つの要因があるが,院内感染対策においては病原体を①持ち込まない,②持ち出さない,③広げない,が基本になる。今回この基本要素強化のため,これまでの入院時監視培養から対象患者を広げ,検査対象菌を海外渡航者にも対応した新たな監視培養に変更した。監視培養患者の選択は,医療スタッフだけでなく事務職員の協力により全患者で漏れなく実施できたが,監視培養であるにもかかわらず検体採取が遅れたケースがあったので,検体採取は入院後3 日以内に実施することを明確化した。運用後,これまで検出できなかったまれな耐性菌を早期に検出し,適切な院内感染対策が実施できたことは有意義であったが,もっとも検出件数が多いメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)への対応不備による院内伝播亢進の可能性も推測されるため,早急に接触感染対策の見直しも必要であると考えられた。

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© 2020 日本臨床救急医学会
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