日本臨床救急医学会雑誌
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症例・事例報告
急性カフェイン中毒に対する持続血液透析の施行経験
三浦 航鶴岡 歩孫 麗香吉野 智美山下 智也宮市 功典林下 浩士
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2021 年 24 巻 3 号 p. 429-433

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抄録

今回われわれは,血中致死濃度を上回る急性カフェイン中毒患者に対して持続血液透析を施行した1 例を経験したため報告する。症例は30歳代,男性。自殺目的にカフェイン(無水カフェインにして13g)を大量服用し,服用5時間後に気分不良が出現し自ら救急要請した。来院時所見として頻脈,高血圧,間代性痙攣,代謝性アシドーシスがみられた。持続血液透析(continuous hemodialysis;CHD)を開始したところ,開始10 時間で臨床症状の改善が得られ,CHDは15時間で終了した。精神科の診察を経て第8病日に退院となった。退院後に判明した入院時の血中カフェイン濃度は132.68μg/mLと血中致死濃度とされる80〜100μg/mL を上回っていた。血中カフェイン濃度からCHDのカフェインクリアランス値を計算したところ0.437mL/min/kgとなり,これは患者自身の肝による代謝クリアランスを下回る値であった。カフェイン中毒においては,血中カフェイン濃度の半減期が大幅に延長し,消化管からの吸収も遅延するため二峰性に血中カフェイン濃度が再上昇する可能性を考慮する必要がある。単回のHDでは二峰性の濃度上昇に対応できないと考え,本症例における血液浄化療法のモダリティとしてはCHDを選択した。しかし実際には,CHDによるカフェインのクリアランスは低くHDほど効率的ではなかった。カフェイン中毒に対して血液浄化療法を施行する場合は,まずHDを施行し速やかに血中濃度を安全域まで低下させ,二峰性の濃度上昇による症状が出現しないか経過観察することが重要と思われる。

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