日本臨床救急医学会雑誌
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症例・事例報告
非閉鎖空間で単独発症した一酸化炭素中毒の1例
岡田 和弘河中 拓郎森 雅博近澤 博夫吉田 政之
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2023 年 26 巻 4 号 p. 548-551

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抄録

一酸化炭素(CO)中毒は閉鎖空間で集団での発症が多く,発生状況から推定されることが多い。しかしながら,状況からでは想定困難なCO中毒の発生もあり得る。今回,非閉鎖空間において単独で発生し,熱中症が疑われたCO中毒の症例を経験した。症例は60歳代の男性。高血圧症にて近医に定期通院され内服治療により血圧は安定していた。工場内にあるガス発生装置上部での作業中に,突然5分程度持続する強直性の痙攣を発症し救急要請された。巨大工場の一角で発症したが,近傍にあるシャッターや窓は開放状態で,周囲の作業員は無症状であった。作業場に熱気があり,多量の発汗が認められたことより熱中症が疑われ搬送された。動脈血ガス検査にてカルボキシヘモグロビン(COHb)34.5%と高値が判明しCO中毒と診断され,高気圧酸素療法を目的に高次医療機関へ転院となった。CO中毒は想定しにくい環境下でも発生し得ることを救急隊員および救急医は再認識しておくことが必要である。

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