日本臨床救急医学会雑誌
Online ISSN : 2187-9001
Print ISSN : 1345-0581
ISSN-L : 1345-0581
症例・事例報告
髄膜脳炎を合併した日本紅斑熱の1例
中山 美里尾崎 諒吏具嶋 泰弘前原 潤一
著者情報
ジャーナル フリー

2024 年 27 巻 2 号 p. 108-111

詳細
抄録

75歳,男性が意識変容と全身の発疹,発熱のため受診した。7日前に山中で右下腿を虫に刺され,黒色痂皮が付着していた。血液検査で炎症反応上昇と肝腎機能障害,DICを認め,リケッチア感染症を疑いミノサイクリン投与を開始した。入院後に意識障害が増悪し,髄液検査では単核球優位の細胞数増加と軽度の糖低下を認めた。痂皮PCR検査でRickettsia japonicaが陽性と判明したため髄膜脳炎を合併した日本紅斑熱と診断し,ミノサイクリン投与を継続し意識障害は改善した。これまで日本紅斑熱の髄膜脳炎合併はまれとされてきた。日本紅斑熱は重症例ほど意識障害を呈しやすく,治療開始の遅れやsIL-2R高値が重症化リスク因子である。重症例や髄膜脳炎合併例ではニューキノロン系抗菌薬併用が有用との報告もある。 重症化リスクの高い患者では髄膜脳炎による意識障害を呈し得ることを念頭におき,髄液検査や追加治療を検討する必要がある。

著者関連情報
© 2024 日本臨床救急医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top