日本臨床救急医学会雑誌
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原著
  • ―その聴診器本当にきれい?―
    小野内 汐美, 大山 清実広, 安永 天音, 星野 凪沙, 大橋 一孝, 鈴木 光子, 大山 亜紗美, 小野寺 誠, 伊関 憲
    原稿種別: 原著
    2024 年 27 巻 2 号 p. 75-79
    発行日: 2024/04/30
    公開日: 2024/04/30
    ジャーナル フリー

    目的:聴診器の汚染度を,ルミテスターを用いてATP拭き取り法で測定した。聴診器の汚染度を測定し,その後酒精綿で拭って効果があるかを検討した。方法:救命救急センター病棟で用いている看護師の聴診器を無作為に抽出し,ルミテスターを用いて聴診器の膜型面の汚染度を調べた。酒精綿を用いて10秒間拭き,5分乾かした後に測定した。また,膜型面の細菌培養検査を行った。結果:54個の聴診器について調査を行った。拭き取り前の汚染度は1,895.5 RLU であり,拭き取り後379.5 RLU であった。拭き取り後は前に比べて有意に減少していた。細菌培養検査では常在菌を検出した。考察:病棟で使用されている聴診器は細菌による汚染があった。酒精綿で10秒間拭き取ることにより84%の減少効果があったが,完全には除菌されてはいなかった。結論:聴診器の使用後と使用前に酒精綿などで拭き取りを行う必要がある。

  • 齊藤 将之, 中島 義仁, 堀 英生, 鈴木 匡, 市原 利彦
    原稿種別: 原著
    2024 年 27 巻 2 号 p. 80-85
    発行日: 2024/04/30
    公開日: 2024/04/30
    ジャーナル フリー

    アミオダロンは成人の生命を脅かす不整脈の治療に広く用いられている。本研究では,2008年1月〜2021年12月までに当院で末梢静脈からアミオダロンを投与された患者314例を対象とした。これらの患者のうち,静脈炎を発症したのは40名(12.7%)であった。われわれは静脈炎発症までの時間を先発品と後発品の投与で比較した。 その結果,アミオダロンの後発品使用患者のほうが先発品使用患者よりも静脈炎発症までの時間が短かった(p<0.001)。さらに,後発品使用群ではアミオダロン投与開始時から静脈炎発症までの白血球の増加比が先発品使用群よりも有意に上昇していた(p=0.04)。これらの結果は,アミオダロンの後発品を患者に使用した場合,患者に不利益が起きている可能性を示唆している。後発点滴医薬品の安全性に関する情報は限られており,本研究で観察された違いの原因を特定するためにはさらなる研究が必要である。

調査・報告
  • ―突然の心停止対応に特化したAED班の設置と救命できた4症例―
    角南 和治, 津島 義正, 石井 史子, 木下 公久, 羽井佐 実, 氏平 徹, 髙田 良江, 堀 純也, 西岡 良子, 氏家 良人
    原稿種別: 調査・報告
    2024 年 27 巻 2 号 p. 86-92
    発行日: 2024/04/30
    公開日: 2024/04/30
    ジャーナル フリー

    おかやまマラソンは2015年より約15,000人のランナーが参加し開催されている。救護所13カ所,ドクターランナー約50名に加え,突然の心停止に特化して対応するAED班を設置した。AED班は待機班(沿道に0.5〜1km間隔),自転車班,フィニッシュエリア班に分け,NPO救命おかやま(日頃から心肺蘇生講習会に携わる医療従事者,救急救命士などで構成)に医療系学生などが救護サポーターで加わり,約200名余りで編成した。前日の救命講習会を受講した者はメディカルランナーとして協力を依頼した。全7回の大会で99,795名(男性81.3%)が出走し,男性4名が心停止となった。全例で心室細動を認めAEDによる最初の除細動で心拍再開,病院に搬送され後遺症なく退院された。おかやまマラソンでは10万人ランナー当たり4.0人の心停止発症と非常に多かったが,医療救護体制が有効に機能した。地方都市の大規模イベントでは地域の特徴に応じた救護体制が重要と考えられた。

  • ―学校事故の実態理解と救命活動への自信の変化に着目して―
    関 由起子, 桐淵 博
    原稿種別: 調査・報告
    2024 年 27 巻 2 号 p. 93-101
    発行日: 2024/04/30
    公開日: 2024/04/30
    ジャーナル フリー

    目的:一次救命処置(basic life support;BLS)に関する実技講習受講経験のある教職志望学生に対して,学校事故の統計や学校事故の実例を講義に取り入れることにより,救命活動への自信がどのように変化するかを検討する。方法:A大学教育学部1年生対象の講義前後にアンケートを実施した。講義ではBLSの基本と効果に加え,体育活動時などにおける事故対応テキスト〜ASUKAモデル〜,学校事故統計,死亡・救命事例などについて説明した。結果:回答率は80.4%(316名)であった。実技講習の受講経験があるものは275名 (87.0%)であり,受講場所では中学校の授業がもっとも多かった(62.7%)。しかし,「救命活動ができる」と回答した割合は8.2%であった。救命活動への自信(11段階SD法)は,講義前後で平均3.8の上昇があり,多変量解析の結果,自信の変化理由を「やらなければという自覚が高まったから」と回答した場合に有意に自信が高かった。結論:学校での事故の実態と事例を理解することにより,子どものいのちを守ることが教員の使命との認識が高まり,救命活動への自信が高まることが明らかとなった。

症例・事例報告
  • 石亀 那歩, 広瀬 由和, 井ノ上 幸典, 中原 亜紗, 橋立 英樹, 草部 雄太, 廣瀬 保夫
    原稿種別: 症例・事例報告
    2024 年 27 巻 2 号 p. 102-107
    発行日: 2024/04/30
    公開日: 2024/04/30
    ジャーナル フリー

    Clostridium septicumによる非外傷性ガス壊疽が急激に進行して死亡し,剖検で大腸癌が判明した1例を報告する。症例は70歳代,女性。来院3日前に左肩痛が出現し,悪化傾向のため救急搬送された。来院時左上肢・体幹部に紫斑や水疱,皮下気腫を認めた。CTにて頸部から体幹部・左上肢に広範な皮下気腫を認め,腹部では上行結腸壁の一部が穿孔し周囲の脂肪織濃度上昇を認めた。消化管穿孔の合併を疑ったが炎症は局所にとどまっていると考え,急速に進行するガス壊疽の治療を優先し緊急で左肩甲帯離断術を施行した。しかし壊死範囲は拡大し全身状態は急速に悪化し,第2病日に永眠された。血液培養からC. septicumが検出され,病理解剖にて上行結腸癌の穿孔と,癌病巣にC. septicum感染を認めた。C. septicumによる非外傷性ガス壊疽は大腸癌など悪性腫瘍患者に合併することが多く,急速に進行し死亡率も高い。非外傷性のガス壊疽患者ではC. septicumによるガス壊疽を念頭に,大腸癌を含めた悪性腫瘍の検索が必要である。

  • 中山 美里, 尾崎 諒吏, 具嶋 泰弘, 前原 潤一
    原稿種別: 症例・事例報告
    2024 年 27 巻 2 号 p. 108-111
    発行日: 2024/04/30
    公開日: 2024/04/30
    ジャーナル フリー

    75歳,男性が意識変容と全身の発疹,発熱のため受診した。7日前に山中で右下腿を虫に刺され,黒色痂皮が付着していた。血液検査で炎症反応上昇と肝腎機能障害,DICを認め,リケッチア感染症を疑いミノサイクリン投与を開始した。入院後に意識障害が増悪し,髄液検査では単核球優位の細胞数増加と軽度の糖低下を認めた。痂皮PCR検査でRickettsia japonicaが陽性と判明したため髄膜脳炎を合併した日本紅斑熱と診断し,ミノサイクリン投与を継続し意識障害は改善した。これまで日本紅斑熱の髄膜脳炎合併はまれとされてきた。日本紅斑熱は重症例ほど意識障害を呈しやすく,治療開始の遅れやsIL-2R高値が重症化リスク因子である。重症例や髄膜脳炎合併例ではニューキノロン系抗菌薬併用が有用との報告もある。 重症化リスクの高い患者では髄膜脳炎による意識障害を呈し得ることを念頭におき,髄液検査や追加治療を検討する必要がある。

  • 中山 美里, 中山 雄二朗, 前田 将, 具嶋 泰弘, 前原 潤一
    原稿種別: 症例・事例報告
    2024 年 27 巻 2 号 p. 112-116
    発行日: 2024/04/30
    公開日: 2024/04/30
    ジャーナル フリー

    65歳,男性が発熱,意識障害のため救急搬送された。来院時はショックで,右下肢痛を訴え,患部に紫斑と水疱形成が認められた。重症軟部組織感染症として緊急入院し,メロペネム,バンコマイシン,クリンダマイシンの投与を開始した。Finger testが陽性であり,直ちに右下肢切断術を施行した。術後は集学的全身管理を継続したが,紫斑が全身に拡大し第3病日に死亡した。後に血液培養からVibrio parahaemolyticusが検出された。Vibrio parahaemolyticusは主に腸炎を引き起こし,壊死性筋膜炎の原因となることはまれである。壊死性筋膜炎の臨床像は概ねVibrio vulnificusによるものと同様で,免疫不全状態や海産物・海水への曝露がリスクとなり,死亡率も非常に高い。本症例ではアルコール多飲や海水曝露の病歴からVibrio属感染の可能性を考え,テトラサイクリン系抗菌薬やフルオロキノロン系抗菌薬の併用を検討すべきであった。

  • 山本 祥寛, 竹本 正明, 中野 孝明, 金澤 将史, 杉村 真美子, 田井 誠悟, 若山 功, 斎藤 正博, 前場 覚, 伊藤 敏孝
    原稿種別: 症例・事例報告
    2024 年 27 巻 2 号 p. 117-120
    発行日: 2024/04/30
    公開日: 2024/04/30
    ジャーナル フリー

    症例は79歳,女性。自転車で走行中に胸痛を自覚し転倒,目撃者より救急要請。バイタルサインは血圧70/50mmHg,脈拍84回/ 分,呼吸数18回/ 分,SpO2 98%(室内気),Glasgow Coma Scale E4V3M5で,橈骨動脈は微弱であった。超音波検査で大量の心囊水を確認した直後に意識低下,下顎呼吸となり,大腿・橈骨動脈ともに触知不可となった。心タンポナーデで心停止寸前と判断し,気管挿管に先行してバッグ・バルブ・マスク(以下,BVM)換気下の心囊ドレナージ(以下,PD)を行った。血性心囊水を65mL ほど排液し,収縮期血圧120mmHgへ復帰し,意識も完全回復した。以降は自然滴下のみとした。CT検査から,Stanford A型急性大動脈解離(以下,A型大動脈解離)と診断し手術加療を行った。術後経過は良好で,第48病日,独歩で自宅退院した。心停止寸前のA型大動脈解離に合併する心タンポナーデでは必要十分量のPDは有効で,状況によりBVM換気下PDも検討される。

  • 髙野 隼, 中島 絵理, 原 直輝, 勝田 晃平, 宇佐美 健喜, 有野 聡, 佐々木 庸郎, 小島 直樹, 稲川 博司, 岡田 保誠
    原稿種別: 症例・事例報告
    2024 年 27 巻 2 号 p. 121-125
    発行日: 2024/04/30
    公開日: 2024/04/30
    ジャーナル フリー

    周産期心筋症はまれな病態であるが,致死的になることがあり注意を要する。今回,生来健康な30歳,女性が感染性流産に伴う敗血症性ショックで入院した。入院後に著しい心機能の低下を認めたため,敗血症性心筋症だけでなく周産期心筋症の関与を疑った。欧州のガイドラインで推奨されているドパミンアゴニストであるブロモクリプチンの投与を行ったところ心機能の改善を認めた。敗血症性心筋症と周産期心筋症の鑑別は困難であり,本症例のように周産期に敗血症を起こし心機能低下をきたした症例においては,適応外使用であることを患者・家族に十分に説明して同意を得たうえで,ブロモクリプチン投与を考慮してもよいと思われる。

編集後記
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