日本臨床救急医学会雑誌
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28 巻, 1 号
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会告
総説
  • 竹内 一貴, 瀬之口 真美, 原島 健也, 内野 正人
    原稿種別: 総説
    2025 年28 巻1 号 p. 1-9
    発行日: 2025/02/28
    公開日: 2025/02/28
    ジャーナル フリー

    改正救急救命士法施行後,医療機関に勤務する救急救命士は年々増加傾向にあり,活躍の場が広がる一方で業務確立が課題となっている。メディカルコントロールの制約下でのみ能力を発揮する救急救命処置は,院内では医師から直接の指示を即時受けることが可能であるとともに,看護師や臨床研修医師などと職域が干渉する側面もある。救急救命処置は限定的ではあるが,プレホスピタル領域である病院救急車内をはじめとした現場活動においては,大いに力を発揮できる。当院では救急救命士を採用して10年が経過し,これまで病院救急車運用に注力してきた。救急救命管理料などを算定することで,救急車維持費用も補塡し,持続可能な運用を実現している。病院救急車運用は病院に勤務する救急救命士の基盤的業務となりモチベーションにもつながるが,安全管理などの課題も依然存在する。今後はタスクシフト/シェア推進や地位向上を目指し,病院の一職員として運営に貢献したい。

原著
  • ―病院救命士に焦点を当てて―
    須田 果穂, 山勢 博彰, 田戸 朝美, 山本 小奈実
    原稿種別: 原著
    2025 年28 巻1 号 p. 10-18
    発行日: 2025/02/28
    公開日: 2025/02/28
    ジャーナル フリー

    目的:救急領域での医師・看護師のタスク・シフト/シェアへの認識と多職種の連携・協働における課題を病院救命士に焦点を当てて明らかにすること。方法:医師・看護師各11名に半構造的面接を行い,質的内容分析を行った。結果:タスク・シフト/シェアへの認識として,【タスク・シフト/シェアへの肯定的な認識】【タスク・シフト/シェアの推進に必要と認識している取り組み】【タスク・シフト/シェアを困難にする認識】の3つのカテゴリーが抽出された。また,多職種の連携・協働における課題として,【多職種の連携・協働に必要な意識の醸成】【タスク・シフト/シェア推進のための体制の確立】の2つのカテゴリーが抽出された。結論:看護師がその資質・専門性を十分に発揮するにあたっては,看護師側からのタスク・シフト/シェアを進めることが一つの方略であるが,その専門性を考慮し慎重に検討する必要があることが示唆された。

  • 髙田 康平, 石田 和正, 畝村 有佑己, 岡島 正樹
    原稿種別: 原著
    2025 年28 巻1 号 p. 19-28
    発行日: 2025/02/28
    公開日: 2025/02/28
    ジャーナル フリー

    目的:救急隊員が内因性の傷病者に対し,適正に病態を判断した割合およびこれに関連する因子を特定する。方法:2022~2023年までの,白山野々市広域消防本部管内の事故種別が急病で救急隊員が傷病者の搬送先医療機関を選定した2,718例を抽出し,病態適正判断群1,871例と非適正判断群847例の2群に分類し,病態適正判断率およびこれに関連する因子について検討した。結果:救急隊員が病態を適正に判断した割合は68.8%(1,871/2,718)で,疾病分類別(p<0.01)および119番通報覚知時間帯別(p=0.01)に差がみられた。高い年齢(オッズ比[95%信頼区間]:0.99[0.99-0.99]),糖尿病の既往歴(0.67[0.49-0.90]),高い体温(0.72[0.67-0.78])は適正判断率の低下と関連し,嘔吐の観察は適正判断率の上昇と関連していた(1.31[1.04-1.65])。結論:救急隊員が病態を適正に判断した割合は68.8%で,傷病者の高い年齢,高い体温および糖尿病の既往歴は病態適正判断率を下げ,嘔吐の観察は病態適正判断率を上げる。

調査・報告
  • 小田 有哉
    原稿種別: 調査・報告
    2025 年28 巻1 号 p. 29-32
    発行日: 2025/02/28
    公開日: 2025/02/28
    ジャーナル フリー

    背景:日本南極地域観測隊は日本から約14,000km離れた昭和基地にて基地運営・観測を行っている。昭和基地への主な人員・物資輸送は,年一度の南極観測船で行われている。昭和基地で傷病者の対応が困難な場合は,船舶・航空機による緊急搬送を行っている。目的:緊急搬送例を抽出し,今後の予防に寄与すること。方法:1956年11月~2021年3月まで,第1次南極地域観測隊報告から第61次南極地域観測隊報告までの文献調査を行った。結果:6例の緊急搬送があった。4例は船舶,2例は航空機による緊急搬送であった。1980年代は外傷による緊急搬送が2例,1990年以降は内因性疾患による緊急搬送が4例あった。帰国までの日数は最短で10日間,最長で約3カ月であった。緊急搬送を予防するには,①外傷・内因性疾患の発症予防,②伝送可能な検査機器を併用した遠隔医療相談の活用,③救急総合診療医の派遣が有用だと考える。

  • ―全国アンケート調査による研究―
    宮安 孝行, 藤村 一郎, 小倉 圭史, 田代 雅実, 小野 勝範, 田中 善啓, 大保 勇, 赤木 憲明, 髙本 聖也, 五十嵐 隆元
    2025 年28 巻1 号 p. 33-40
    発行日: 2025/02/28
    公開日: 2025/02/28
    ジャーナル フリー

    目的:本研究の目的は外傷全身CT施行例の被ばく線量を実効線量で評価し,海外の文献との比較を行うことである。方法:本研究は2019年に著者らが報告した外傷全身CT被ばく線量調査の結果をもとに行った。この調査は全国の救命救急センター284施設を対象に,日本救急撮影技師認定機構が運用しているメーリングリストを用いて調査フォームを送付し,2017年8月から4カ月間に撮影された症例のdose length product(以下DLP)を集計した。このうち年齢が20歳以上で体幹部の造影検査まで行われた586症例を対象に,DLP-実効線量変換係数を用いてDLPを実効線量に換算し評価した。結果:実効線量の中央値は54.0mSvであり,最小値は8.4mSv,最大値は170.1mSvであった。実効線量が100mSvを超えた症例は48例(8%)であった。撮影方法や造影時の撮影時相の違いによる影響が考えられた。結語:本研究により国内の外傷全身CTの実効線量は,海外の実効線量より高いことが示された。よって,今後,被ばく線量を低減するために外傷全身CTにおける撮影方法の標準化が必要と考える。

  • 田代 雅実, 田中 善啓, 深谷 理人, 塩田 翔一, 五月女 康作, 山品 博子
    原稿種別: 調査・報告
    2025 年28 巻1 号 p. 41-47
    発行日: 2025/02/28
    公開日: 2025/02/28
    ジャーナル フリー

    外傷全身CTの上肢挙上困難例では,上肢によって生じるアーチファクトにより画質低下を引き起こす。本研究は,dual-energy CT(以下DECT)が上肢によって生じるアーチファクトを改善できるかを評価した。人体ファントムを用いた評価により,DECTのstandard deviation(SD)は,single-energy CT(以下SECT)よりも有意に向上したことが示された。また,DECTの軟組織ロッドのcontrast-to-noise ratio(CNR)は,SECTよりも高く画質の向上が期待された。このことから, DECTは,撮影時間,画像作成時間を考慮しながら上肢挙上困難例の外傷全身CTに,DECTが有用である可能性が示唆された。

  • 白子 隆志
    原稿種別: 調査・報告
    2025 年28 巻1 号 p. 48-55
    発行日: 2025/02/28
    公開日: 2025/02/28
    ジャーナル フリー

    赤十字国際委員会(International Committee of the Red Cross,以下ICRC)は1863年に創設され,紛争地での被災者支援を担ってきた。筆者は2002年にスーダン,2004年にアフガニスタンの戦傷外科病院でICRC外科医として派遣され,以後2005年にパキスタン北部地震Field Hospital運営,2010~2011年にウガンダ北部病院外科支援,2018年にバングラデシュField Hospital,南スーダンICRC外科病院で外科医として活動した。国内で紛争地医療を経験することは困難で,紛争地・発展途上国の戦傷外科を含む外傷診療を想定した「災害外傷セミナー」を医師・看護師などの派遣希望者に対し12回開催した。ウガンダ北部病院外科支援事業では,医療資源が乏しいなかで,熱帯地域特有の疾患,環境をわが国の医師・看護師たちが経験でき,現地の若い医師・看護師を育成した。戦傷外科の実際と赤十字の紛争地医療の教育の課題について述べる。

  • 佐藤 信宏, 廣瀬 保夫, 笠原 篤, 赤澤 宏平, 山添 優, 山崎 哲
    原稿種別: 調査・報告
    2025 年28 巻1 号 p. 56-62
    発行日: 2025/02/28
    公開日: 2025/02/28
    ジャーナル フリー

    新潟市におけるCOVID-19流行の救急応需への影響を調査した。2019年1月~2022年12月の救急搬送全症例を対象とした。COVID-19流行期(第8波:2022年11,12月)と非流行期(2021年11,12月)における救急搬送患者の特徴を比較した。また,救急搬送困難例(病院照会件数4回以上)について,多重ロジスティック回帰分析を行った。2022年に救急搬送数は激増し,搬送困難例が2倍となった。流行期と非流行期の比較では,急病,二次医療機関への搬送数が増加した。COVID-19流行下では15~64歳・80歳以上,中等症が搬送困難例のリスク要因であった。COVID-19流行による救急搬送増加は,中等症・高齢者が主体であり,二次救急医療機関への負担が大きく,搬送困難割合増加につながっていた。新潟市で二次救急を担っているのは小規模~中規模の医療機関が多いが,その機能強化が必要と考えられた。

症例・事例報告
  • 松尾 健志, 西村 哲郎, 溝端 康光
    原稿種別: 症例・事例報告
    2025 年28 巻1 号 p. 63-67
    発行日: 2025/02/28
    公開日: 2025/02/28
    ジャーナル フリー

    重症熱傷患者は感染を契機に致命的な経過をたどることもあるため,処置時の感染対策がきわめて重要である。スタッフからの感染や他の患者との間での水平伝播を防止することが課題であり,そのためにはスタッフ間で標準化された処置の知識や方法を身につけることが不可欠である。しかし,重症熱傷患者が近年減少するなか,これらを恒常的に習得することが難しくなっている。そこで,当科では日々の業務のなかにシミュレーショントレーニングを取り入れ,全スタッフが共通の感染対策を行い円滑に処置が実施できるようにした。自主学習のみでは熱傷処置のとくに技術の獲得は困難である。反復練習を行いかつテストを義務化することで全スタッフがトレーニングを重ね,一定の技能を習得できる環境を構築した。ガーゼ交換などの熱傷処置でのシミュレーショトレーニングを導入することで,熱傷処置時の感染対策に必要な知識や技術の獲得を役立つと考える。

  • 辻井 俊二, 西 憲一郎, 岡本 明久, 小松崎 崇, 新田 翔, 桑野 翔太, 松井 雅貴, 楠 淑, 大嶋 圭一, 内海 潤
    原稿種別: 症例・事例報告
    2025 年28 巻1 号 p. 68-72
    発行日: 2025/02/28
    公開日: 2025/02/28
    ジャーナル フリー

    症例は67歳,男性。肺腺癌に対して右上葉切除術後,化学療法による薬剤性間質性肺炎を既往にもつ。嘔吐後の発熱および呼吸困難感を主訴に来院し,重症肺炎による敗血症性ショックの診断で気管挿管のうえ,人工呼吸管理となった。臨床所見では経時的な酸素化の改善を認めていたが,背景肺に気腫性変化を認めており,胸部X線では肉眼的には著明な変化を認めなかった。肺の換気状態を知るために呼吸に伴う信号値変化を可視化するX線動態画像解析を行ったところ,当初部分的であった換気を示す領域が経過とともに全体的に広がっており,換気が改善されていることが示唆され,臨床経過を裏づける結果となった。X線動態画像はポータブル環境での撮影も可能であり,低侵襲で多くの情報が得られることから,コンピュータ断層撮影(computed tomography,以下CTと略す)など高度な診断装置を使用する前のスクリーニング検査としても有用性が高いと考える。

  • 金村 剛宗, 弦切 純也, 大竹 成明, 沼田 儒志, 奈倉 武郎, 佐野 秀史
    原稿種別: 症例・事例報告
    2025 年28 巻1 号 p. 73-77
    発行日: 2025/02/28
    公開日: 2025/02/28
    ジャーナル フリー

    Hemophagocytic lymphohistiocytosis(以下,HLH)はT細胞やマクロファージの活性化によるサイトカインの過剰産生が一因とされ,重症例は不可逆的な多臓器不全に陥ることがある。症例は,1週間前から40℃以上の発熱と黄疸を主訴に当院に救急搬送された40歳代の男性。来院時の意識は晴明で,循環は安定していたが頻呼吸であった。また,咽頭発赤,眼球結膜黄染,頸部リンパ節腫脹を認めた。血液検査では,白血球および血小板減少,肝機能障害,腎機能障害を認め,さらに,lactate dehydrogenase(LDH),C反応蛋白,トリグリセリド,フェリチンなどが上昇していた。HLHを疑い,同日からステロイドパルス療法,γグロブリン療法を開始したが,症状の改善に乏しく,2病日からサイトカイン吸着目的にpolymethyl methacrylate(PMMA)膜を用いた持続的血液濾過透析を開始した。その後,間接的サイトカインマーカーであるフェリチンやLDHは低下し,症状も改善した。入院翌日の骨髄塗抹標本からHLHと確定診断し,その後の再燃はなく自宅退院した。サイトカイン除去を目的としたPMMA持続的血液濾過透析の早期導入を併せた集学的治療は,HLHの病勢を抑制できる可能性がある。

  • 前原 健司, 平井 理恵, 永島 健太, 池上 良一, 柏谷 信博
    原稿種別: 症例・事例報告
    2025 年28 巻1 号 p. 78-82
    発行日: 2025/02/28
    公開日: 2025/02/28
    ジャーナル フリー

    処方歴のない硝酸イソソルビドテープを誤使用した後,心停止となった症例を経験した。患者は93歳,男性。既往に心房細動,慢性心不全があった。胸が苦しくなり,受診行動中に動けなくなっているところを発見されて救急要請された。救急隊接触時,橈骨動脈触れずショック状態,意識レベルJCS 100であった。救急車内収容後に心停止(初期波形は無脈性電気活動)となり,胸骨圧迫開始後,心拍再開し,乳酸リンゲル液全開,補助換気継続で病院搬送となった。搬送後,左肘に表皮剝離があり,同部位に硝酸イソソルビドテープ40mgが2枚貼付されていることが判明し,心停止の原因と疑われ,直ちに剝離された。その後,バイタルサイン悪化を認めず,入院5日目に自宅退院となった。患者は絆創膏と誤認して硝酸イソソルビドテープを使用していたが,本人に対する処方歴はなく,誤使用に至った背景には医薬品の譲受が考えられた。

  • 関口 萌, 磯川 修太郎, 飯田 英希, 白﨑 加純, 一二三 亨, 大谷 典生
    原稿種別: 症例・事例報告
    2025 年28 巻1 号 p. 83-87
    発行日: 2025/02/28
    公開日: 2025/02/28
    ジャーナル フリー

    45歳男性が発熱と意識障害で救急搬送され,副鼻腔炎に続発したLemierre症候群と診断した。来院時に眼球突出がみられ,脳静脈洞血栓症と両側内・外頸静脈血栓症,細菌性髄膜炎,脳膿瘍を合併しており,人工呼吸管理のうえ集中治療室へ入室した。中枢神経への移行性を考慮した抗菌薬投与や感染源のコントロールとして副鼻腔ドレナージ術,血栓症に対する抗凝固療法を行い,徐々に意識障害や眼球突出,眼球運動障害は改善し,入院第45病日に神経学的後遺症なく退院した。血液培養からはStreptococcus intermediusが検出,副鼻腔膿瘍からはStreptococcus intermediusFusobacterium spが検出された。中枢神経病変や眼合併症を伴うLemierre症候群では後遺症のリスクが高く,多彩な病態を呈する本疾患における集学的アプローチによる早期診断・早期介入の重要性が示唆された。

編集後記
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