2025 年 28 巻 5 号 p. 767-777
目的:病院外心停止において,救急救命士が行う特定行為は予後に影響を与えるとされるが,その実施場所の判断に影響する要因は十分に明らかとなっていない。本研究は,インタビュー調査により,特定行為の実施場所に影響を与える要因を明らかにすることを目的とした。方法:特定行為の実施経験を有する救急救命士10名を対象に半構造化面接を行い,得られた逐語録に対して計量テキスト分析を実施した。テキストデータを組織的要因,傷病者要因,環境要因,救助者要因の4つに分類し,階層クラスター分析を行った。結果:実施場所に影響を与える要因として,傷病者の年齢や推定原因,活動環境の狭隘性や汚染状況,特定行為の苦手意識などの要因が抽出された。結語:今後は救急隊への教育・研修を通して,現場で特定行為を行うことの意識づけや,一定頻度で特定行為のトレーニングを実施できる環境整備に向けたさらなる取り組みが必要である。