目的:本研究は,わが国における顔面外傷単独症例の特徴と病院前処置を明らかにすることを目的とした。方法:本研究は日本外傷データバンク(JTDB)を用いた後ろ向きコホート研究であり,対象期間は2019年1月~2022年12月である。傷病者背景,受傷部位,病院前処置内容,入院日数について,記述的分析を行った。結果:本研究の分析対象となったのは全症例133,384件のうち1,013件で,もっとも多い受傷機転は鈍的外傷で926件(91.4%)であった。受傷部位は眼が342件(23.0%)ともっとも多かった。病院前処置では,頸椎カラー276件(27.7%),バックボード229件(23.0%)が多かった。入院日数では,1-7日が550件(54.3%)ともっとも多かった。結論:わが国における顔面外傷単独症例の背景と傾向を明らかにした。顔面外傷傷病者の生命予後や機能的改善に向け,傷病者の特性に応じた対応や二次損傷を防ぐ処置方法のさらなる検討が必要である。