2025 年 28 巻 5 号 p. 785-790
消防職という男性職員が全体の大半を占める組織の中で,女性職員の苦悩やジレンマなどの現状把握を目的にアンケート調査を行った。内容は,「救急隊として苦労したこと」「男性隊員との違いについて」「今後も救急隊として勤務していきたいか」「救急隊が24時間勤務であることに難しさを感じているか」等の16問で,選択式および自由記述式にて実施した。対象は,救急隊経験のある女性職員31人で,うち25人から回答を得た(回答率80.6%)。調査の結果,現場活動で苦労したことについては「体力面」がもっとも多く,次いで「生理期間中の出動」であった。男性隊員との違いを感じる場面としては,「男性隊員との体力差」をほぼ全員が感じていた。今後も救急隊で勤務したいかに関しては,過半数以上が勤務を希望していた。救急隊が24時間勤務であることに難しさを感じている職員は16人(64%)で,そのうち7人(44%)が育児への懸念を感じていた。自由記述欄からは,子どもを預かる制度や設備の創設・拡充,救急現場以外の分野で救急救命士資格や現場経験等の知識を有効活用できる場所が欲しい等の要望を知ることができた。アンケート結果より,体力面を補完するための資器材の導入,日勤救急隊等での勤務時間の工夫,ロールモデルの育成,定期的な意見交換会の4点の対応策が求められているものと考察する。今回の結果を示すことで,女性消防吏員を理解する一助となり,さらなる女性職員活躍推進へつながるよう,ワーク・ライフ・バランスの実現に向け,現場隊員の抱える課題として女性隊員の声を報告する。