2000 年 3 巻 5 号 p. 477-481
高齢者の術後肺炎発生因子として身体能力と免疫能の重要性について検討した。緊急手術を施行した70歳以上の高齢者(36例)を対象として,術前日常生活動作能力(N-ADL)を評価し,正常(A)群:22例と低下(B)群:14例の2群に分けた。この両群間で術後肺炎の有無,術前leuko index(LI),術前の小野寺式予後判定指数(NSRI),P/F比を比較検討した。B群14例のうち9例(64.3%)で肺炎を併発していた(p<0.05)。LIはA群12.0±5.7,B群20.6±12.6と両群間で有意な差がみられた(p<0.05)。しかし,NSRIはA群34.0±4.9,B群33.9±6.7であった。酸素化機能に関して,術前P/F比はA群290.3±80.5,B群236.2±46.9であった(p<0.05)。以上から,術後肺炎合併はADLの低下による喀出力低下や免疫機能,とくにLIの結果から,細胞性免疫が低下していることが考えられ,これらが肺炎合併のriskを増加させると考えられた。