2000 年 3 巻 5 号 p. 482-487
1994年5月から2000年6月までに当センターに入院し,集中治療を要した20例の脳炎患者を対象とし,予後に関わる因子について検討した。完全回復12例,後遺症残存8例に分類して検討した結果,後遺症残存例では痙攣の併発が高い傾向にあり,意識障害が遷延化する傾向にあった。画像上,異常所見の出現頻度は両群とも,CTよりMRI,MRIよりSPECTのほうが高かった。SPECTの所見では,急性期での片側性に高集積を呈する症例よりも,全般的な血流低下を示している所見の症例が,後遺症を認める傾向にあった。また,脳血流量の回復不良は,意識障害の遷延化に関係しているものと考えられた。以上,脳炎の予後に関わる因子について検討したが,臨床症状では痙攣の併発,意識障害が5日以内に回復しない患者,画像所見ではSPECTによる全般的な脳血流量の低下を認める症例は,後遺症を認める傾向にあった。