2001 年 4 巻 1 号 p. 41-46
B型肝炎ウィルスキャリアの劇症化例を経験したので報告する。症例は56歳女性。既往歴:12年前に急性肝炎(詳細不明)。家族歴:母,次男がB型慢性肝炎。現病歴:不正性器出血にて婦人科を受診。子宮体癌(腺癌)の診断にて入院,抗癌剤動注療法を開始。2回目の動注療法後よりトランスアミナーゼの上昇を認め,劇症化が危惧されたためICU入室。検査結果:AST 1,862 U/l,ALT 1,306 U/l,T-Bil 5.7mg/dl,PT 16.7%と重度の肝機能障害を呈し,DNAポリメラーゼ高値,HBs抗原陽性,HBe抗原陰性,HBe抗体陽性,lgM-HA抗体陰性,HCV-PCR陰性,EBV・CMVは既感染パターンであった。無症候性B型肝炎ウィルスキャリアからの急性肝機能増悪と診断し,集中治療を開始した。原病対策としてインターフェロン,ラミブジン,ステロイド,サイクロスポリンを投与。肝補助療法として血漿交換と持続的血液濾過透析を行った。肝炎が一時鎮静化したものの,最終的に肝不全にて死亡した。B型劇症肝炎に対しては,肝補助療法と原病対策が不可欠で,広範な肝細胞感染と宿主の免疫応答の両者への対策が必要である。治療開始後,DNAポリメラーゼは著減していた。キャリア患者に癌化学療法を行う際,劇症化の危険への配慮の必要性が示唆された。