2002 年 5 巻 1 号 p. 22-28
東京都立府中病院救命救急センターの入院症例から,救急医療における精神科医療の現状と問題点を検討した。1995年5月から2000年4月までの5年間の入院者総数は5,833件で,約5%にあたる308件に精神科対応があり,原因は自殺企図が248件で全体の80%を占めた。自殺企図による入院患者203名中,36名が自殺企図を繰り返し入院となっており,精神疾患分類では精神科対応の全体と自殺企図患者群では分布にほとんど差異はないが,自殺企図を繰り返し入院となった患者群は,自殺企図患者群全体と比して人格障害圏が約2倍であった。また,精神分裂病患者へのインフォームド・コンセントの限界や,その法的能力の問題などが発生し,法制度が関与するために実際の救急医療現場において対処が困難であった症例もみられた。救命救急センターにおける精神科医療は,その必要性に論を待たないが,身体的治療の他に精神科的後方治療のためのさまざまな支援体制や精神科救急システム,法制度などの整備を必要とすることが示唆された。