2002 年 5 巻 3 号 p. 341-345
症例は69歳,男性。うつ病の加療目的で精神科病院に入院中であったが,自殺を企図しデッキブラシの柄を肛門より突き刺し受傷した。来院時胸部X線像では,左の緊張性気胸と胃の胸腔内への脱出を認め緊急手術を施行した。手術により直腸から挿入されたブラシの柄は直腸後壁で直腸壁,後腹膜を穿破し腹腔内に進入した後,腸間膜を貫き,脾臓,膵臓の前面,胃の後面で臓器損傷を来すことなく横隔膜に達し,これを貫通したと考えられた。術後は感染症の治療に難渋した。直腸杙創により横隔膜損傷を来すことは非常にまれであり,若干の考察を加え報告する。