日本臨床救急医学会雑誌
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症例報告
Deadly triadを呈するも,加温腹膜灌流により救命し得た鈍的腹部外傷の1例
小林 正直冨士原 彰秋元 寛筈井 寛福田 真樹子西本 昌義日浦 正仁文元 裕道尾原 幹啓森田 大
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2002 年 5 巻 3 号 p. 336-340

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抄録

重症外傷時の低体温・血液凝固障害・アシドーシスはdeadly triadと呼ばれており,damage control surgery(以下,DCSと略す)が推奨されている。Deadly triadを呈するも,加温腹膜灌流が有効であった鈍的腹部外傷の1例を報告する。症例:41歳,男性。交通事故外傷で血圧74/42mmHg,心拍92/分,体温34.8℃であった。手術開始時,血圧が50mmHgに低下し,緊急開腹した。腸間膜断裂部からの出血を結索したが,止血不能状態に陥った。この時点でpH 7.227,体温33.1℃,血小板26,000/mm3,PT 32秒,APTT 88秒とdeadly triadを呈していた。凍結血漿,血小板を輸血し,出血部を用手圧迫で止血し,加温生食(42~43℃)で腹膜灌流を続けたところ,止血し手術を完遂し得た。手術終了時には36.7℃と低体温は改善していた。結語:豊富な血管床をもつ腹膜の加温効果は予想以上に高かった。加温腹膜灌流はDCSを考慮する場合に試みる価値がある。

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© 2002 日本臨床救急医学会
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