日本臨床救急医学会雑誌
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臨床経験
急性有機リン中毒の初療時の症候および治療内容がICU在室期間に及ぼす影響
岡村 健太岩崎 泰昌井上 健梶原 真二和田 誠之山野上 敬夫岡林 清司大谷 美奈子屋敷 幹雄小嶋 亨
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2002 年 5 巻 4 号 p. 404-408

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抄録

有機リン中毒30例を対象として,初療時の症候および治療内容がICU在室期間に及ぼす影響を検討した。ICU在室7日以上を必要とした8例(L群)と,ICU在室7日未満の22例(S群)の両群間における来院前の因子,来院時および来院後24時間までの所見,治療内容についてretrospectiveに比較検討を行った。L群において有意に多かった因子は来院後24時間までの縮瞳,頻脈,気道および口腔内の分泌亢進であり,S群において有意に多かった因子は,来院前の嘔吐,来院後の胃洗浄・活性炭投与の施行であった。来院時の血中ChE濃度の中央値は両群間に有意差を認めなかったが,L群では全例で低下し正常濃度の症例はなかった。縮瞳,頻脈,分泌亢進が認められ,初診時血中ChE濃度が極度に低下した症例では,集中治療を要する期間が長期に及ぶ可能性が示唆された。S群に有意に多く認められた因子は,いずれも早期の消化管からの排泄,血液中への吸収の防止に関与しており,これらが集中治療期間の短縮化につながった可能性が考えられた。

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© 2002 日本臨床救急医学会
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