日本臨床救急医学会雑誌
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臨床経験
肝損傷例の検討と治療方針
近藤 恵安田 是和栗原 克巳土屋 一成岡田 真樹永井 秀雄河野 正樹山下 圭輔鈴川 正之
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キーワード: 肝損傷, shock index, TAE
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2002 年 5 巻 4 号 p. 409-414

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抄録

当科に搬入された肝損傷50例の経験より治療方針を検討した。手術が必要であった症例は,血圧が安定するまでに2,000ml以上の輸液,輸血を要し,来院時のshock indexが1.4以上であった。またTAE(transcatheter arterial embolization)が必要であった症例の大部分はCT上,多量の腹腔内出血があり,全例が造影剤の漏出を認めた。ENBD(endoscopic naso-biliary drainage),肝内ドレナージの多くはⅢ型損傷に対して施行された。Ⅲ型損傷に対し保存的治療を行った後に遅発性胆汁漏1例を経験してからは,Ⅲ型損傷に対しTAEとともにENBDや肝内ドレナージを積極的に施行しており,その後の遅発性胆汁漏や遅発性肝破裂は経験しておらず,これらのドレナージは重要であるといえる。手術死亡例は全例deadly triadの病態に移行した症例であり,このような症例は肝切除に臨む前に,あるいは肝切除に加えてガーゼパッキングによって止血し,加温,輸血によつて状態を改善させるべきである。

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© 2002 日本臨床救急医学会
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