2002 年 5 巻 4 号 p. 420-424
意識障害のなかでも心大血管系病変の看過は生命予後そのものにかかわる。1995年から5年2か月間に急性大動脈解離が37例搬入され,そのうち8例が意識障害を収容依頼の理由としていた。これらのうち,局所神経症状などのために頭蓋内病変が強く疑われた5例の診断に至るまでの経過を提示する。加えてプレホスピタルケアにおける問題や,救急医療機関での初期対応における早期診断の重要性を考察した。頭部挫創や下肢麻痺のために頭蓋内病変が考えられた症例で,下肢の循環障害やショックの進行に留意しなかったこと,意識障害に先行する胸痛の意義を救急隊から救命救急センターヘ情報伝達を仲介する消防指令センターが十分認識していなかったことがプレホスピタルでの重要な問題点であった。ホスピタルケアにおいては,片麻痺やCT上で明らかな梗塞像を有しても表在動脈の触知や循環動態の異常,胸部単純写真での縦隔の変化に留意する必要がある。