2002 年 5 巻 4 号 p. 442-446
門脈ガス血症は一般に予後不良の兆候とされるが,近年,保存的に軽快した症例も報告されている。今回,われわれが経験した4例はいずれも腸管壊死を伴わず,胃腸粘膜障害や内圧上昇が誘因と考えられた。門脈内ガスはいずれも腹部超音波検査にて確認され,2例ではCTでも確認された。全身状態や腹部理学的所見などを参考に慎重な経過観察を行ったところ,全例において保存的治療にて軽快した。後日確認できた症例では門脈内ガスは1日以内に消失していた。門脈ガス血症の診断,経過観察には腹部超音波検査が有用である。その原因疾患としては,腸管壊死所見の有無を念頭におくべきである。手術適応の判断は,原因疾患によっては保存的治療のみで軽快する症例もあることを念頭において,全身状態,腹部所見,各種検査所見などを参考にして慎重になされるべきである。