2003 年 6 巻 3 号 p. 297-301
症例は21歳,女性。交通事故により頭部打撲し,意識障害を呈したため当科に搬入となった。意識状態は昏睡でシヨック状態であった。頭蓋単純X線検査において,左前頭骨の線状骨折と左前床突起を含めた頭蓋底骨折を認めた。頭部CTでくも膜下出血,左中大脳動脈領域にかけての低吸収域を認めた。受傷1時間後,突然の大量の鼻出血が生じ血圧低下を認め,再度CTでくも膜下出血の増大と脳室内出血,左大脳半球の腫脹による正中変位が認められた。左内頸動脈造影では,蝶形骨洞および内頸動脈C1~C2部から造影剤の漏出を認め,左内頸動脈損傷および仮性脳動脈瘤と診断した。出血が持続したため,テンポラリー・バルーンカテーテルを用いて左内頸動脈損傷部の閉塞を施行した。重症頭部外傷には,本症例のごとく外傷性内頸動脈損傷が存在することを念頭において治療することが重要と考えられる。