2003 年 6 巻 3 号 p. 302-305
多発外傷を扱う医療機関では,肺挫傷による気道出血症例をしばしば経験する。しかし,その急性期対処方針に確立されたものはない。東京災害医療センター救命救急センターでは,2000年に扱った全外傷428例中,気道内出血によるpreventable trauma deathと判断された症例を2例認めた。気道内出血に対してユニベントチューブ®️による気管支ブロック開始のタイミングの遅れが,この2症例において重篤な呼吸不全を導いたものと思われる。今回,preventable trauma deathと判定された症例と気道出血に対する予防的処置を行った症例を呈示し,外傷患者の気道内出血に対するわれわれの試みを紹介する。