2003 年 6 巻 3 号 p. 314-319
症例は29歳,女性。妊娠40週で帝王切開術を施行。術後4日目より38℃台の発熱,倦怠感,腹痛が生じ,6日目からは胸痛,呼吸困難が出現したため当院救命救急センターヘ転院となった。入院時Systemic Inflammatory Response Syndrome(SIRS)の状態にあり,低酸素血症を認め徐々に進行した。末梢󠄁血を検索したところ,塗沫により胎児由来と思われる扁平上皮細胞を多数認めた。その後,急性呼吸促迫症候群(Acute Respiratory Distress Syndrome:ARDS)も合併したが,heparin・ステロイドパルス療法・支持療法により軽快し,第16病日目に退院した。本症例は,胎児由来と思われる物質が母体の末梢󠄁血から検出されたこと,ほかに疑わしい疾患が存在しないことより,何らかの理由で遅発発症した羊水塞栓症と考えている。本症例の経過には,出産直後に発生し,きわめて短時間で死に至る本疾患と異なる点があり,不明とされている本疾患の病態を考えるうえで興味深い1例であり報告する。