2004 年 7 巻 1 号 p. 11-15
H-FABPはAMIの早期診断マーカーとして活用されているが,大動脈血管病変でも陽性を呈することが知られている。しかし,十分な検討は行われていない。大動脈血管病変におけるH-FABPの挙動について,急性大動脈解離および破裂性腹部大動脈瘤患者を対象に,H-FABP,ミオグロビン,トロポニンT,CK-MBの陽性率,濃度分布,ミオグロビン/H-FABP比を指標に検討した。陽性率はH-FABPでA型解離がもっとも高く,破裂性腹部大動脈瘤,B型解離の順であった。ミオグロビンも同様の傾向を示したが,CK-MBは全例陰性であつた。H-FABPの濃度分布はA型解離と破裂性腹部大動脈瘤で著明な上昇を認め,ミオグロビン/H-FABP比はA型解離で低く,他の疾患群はいずれも高値を呈した。H‐FABPの上昇はA型解離では心筋傷害に,B型解離および破裂性腹部大動脈瘤では骨格筋傷害に起因することが示唆された。