目的:JPTECでは,状況評価で高エネルギー事故であるものはLoad and Go適応を考慮し,高次病院への搬送を勧めている。しかし,高エネルギー事故でも軽症のことがある。そこで実際の重症度を検討した。対象と方法:昨年1年間に搬送された交通外傷900例中,明らかに「高エネルギー事故」である238例を対象とした。重症度評価にはRTS,AIS-90を用いた。結果:全238例の平均ISSは16.5で,内訳は外来死亡28例,ICU入院26例,その他の病棟入院93例,独歩帰宅91例であった。RTS 7.8以上の症例は74.8%で,AIS 3以上が1部位以上は116例,多発外傷は58例であった。重症度は歩行者・二輪車に比べ,四輪車乗員で有意に低かった。考案と結語:状況評価で「高エネルギー事故」の交通外傷症例の約半数にAIS 3以上の重症外傷が認められ,約1/4が多発外傷であった。傷病者総数が少ない通常の事故では「高エネルギー事故」全例をLoad and Go適応とし,高次病院へ搬送することは許容される。
東京消防庁では長期間の病院内委託研修生として,1年間にわたり救急救命士を各大学附属病院へ派遣している(以下,院内救急救命士と略す)。日本大学医学部附属板橋病院救命救急センターでは,医師と院内救急救命士が共同し,①医学生に対するbasic life support(以下BLSと略す)の指導,②患者家族を対象とした院内BLSの指導支援,③救急救命士と医師との共同研究を行ってきた。これまで救急救命士と医師とは所属する機関の違いから,相互理解や信頼関係を築き上げることが困難であった。しかし院内救急救命士の派遣により,その実績を院内の多くの医師から認められ,医療機関においてさまざまな活動を生み出してきた。院内救急救命士は,医療・医育機関において医師と共同した教育・研究を行うとともに,医療職として幅広い視野をもつ救急救命士の人材育成にも役立つこととなった。