かつてわれわれは,熱傷急性期死亡の多くが転送症例であることを報告した。そこで,転送症例の輸液量に関して検討した。対象は1995年1月から2002年11月までの期間に入院した重症熱傷78例とした。直接搬入36例(A群),転送42例(B群)で,両群間において来院までの時間,死亡率,24時間輸液量を,B群においては来院までの輸液量を検討した。来院までの時間はA群が平均85.0分,B群が平均262.0分で,B群で死亡率,急性期死亡率が有意に高かった。24時間輸液量をBaxterの式で除した輸液率は平均140%で両群に差はなかったが,来院までの輸液量をBaxterの式から予想される輸液量で除した輸液率は平均82%と少なく,急性期死亡例でより少なかった。転送症例では,輸液量不足が急性期死亡に関係していることがうかがわれ,時間短縮のためのヘリコプター搬送や急性期輸液療法の啓発,搬送中の輸液などの対処に関して病院間の連携が必要と考えられた。