日本臨床救急医学会雑誌
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症例・事例報告
冠動脈造影でまったく描出されなかったびまん性狭窄が剖検時に判明し,所見が大きく乖離した心臓突然死例
吉田 徹今井 寛町井 正人松山 斉久浅利 靖永井 智紀栗原 克由相馬 一亥和泉 徹
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2005 年 8 巻 4 号 p. 322-328

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抄録

症例は42歳,男性。約1時間前からの嘔気,前胸部痛を主訴に救急隊を要請,救急隊到着直後に心肺停止状態となった。心肺蘇生法を施行しつつ当院に搬送され,エピネフリン1mgの静注で心拍再開した。冠動脈造影で明らかな有意狭窄を認めなかったが,びまん性の左室壁運動低下を認めた。カテーテル検査中に血行動態が悪化し,大動脈バルーンパンピング(IABP)と経皮的心肺補助(PCPS)を使用して血行動態を維持しつつICUで経過観察したが,第4病日に死亡した。法医解剖所見では右冠動脈および左冠動脈前下行枝,回旋枝にびまん性の内膜肥厚による約80%の内腔狭窄を認めたが他に明らかな所見を認めなかった。蘇生直後の冠動脈造影で検出不能の冠動脈狭窄が判明したものであり,冠動脈攣縮の関与を推測させるも具体的な機序は現時点では不明である。心筋虚血等による突然死の機序およびその冠動脈造影による検出能について考察するうえで重要な知見と思われた。

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© 2005 日本臨床救急医学会
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