2005 年 8 巻 4 号 p. 337-340
症例は81歳,男性。腰椎脊柱管狭窄症に対する手術(L4/5開窓術)の前処置としてグリセリン浣腸を行ったところ血圧低下,肛門からの出血がみられた。その後,発熱と肉眼的血色素尿がみられ,血液検査にてLDH 552 IU/lと上昇がみられ,グリセリン浣腸による溶血と診断し手術は延期となった。血色素尿は輸液のみの対症療法で速やかに消失し腎不全への進展はみられなかった。翌日,大腸内視鏡を行い下部直腸側壁に浅い潰瘍を確認し,同部位から浣腸液が吸収され溶血をきたしたものと考えられた。その後は絶食のみの保存的加療を行い予定通り開窓術が行われた。グリセリン浣腸は簡単な手技のため看護業務として日常的に行われているが,重篤な合併症の存在を念頭に置く必要がある。