2005 年 8 巻 4 号 p. 334-336
23歳,女性。自殺企図で,フェノチアジン系抗精神病薬28錠,塩酸ミアンセリン21錠,塩酸アミトリプチン42錠など計168錠を服薬し,搬入された。胃洗浄のため経鼻胃管の挿入を試みたが食道途中から先へ進まず,原因検索と胃洗浄目的で緊急内視鏡を施行した。薬剤が溶解後に再凝固した状態で一塊となり下部食道を閉塞していた。これを内視鏡で胃内へ落とし込み,内視鏡下に胃洗浄を施行した。薬物塊付着を認めた食道粘膜に発赤を認めた。本症例の摂取水分量は不明だが,薬剤の食道粘膜への付着によつて閉塞が起こったと思われる。このような症例はまれであるが,胃管の挿入困難時には内視鏡の施行を考慮すべきであり,食道潰瘍発症にも注意が必要である。