日本臨床救急医学会雑誌
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症例報告
急性薬物中毒の治療中に肺動脈血栓塞栓症を併発した1症例
新谷 裕箱田 滋木内 俊一郎
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2006 年 9 巻 3 号 p. 256-259

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抄録

24歳,女性。抗うつ薬など計145錠を服薬し,6時間後に発見され当施設へ入院した。第5病日に歩行中に突然,呼吸苦を訴え,胸部造影CT検査により肺動脈血栓塞栓症と診断した。MR venography検査では静脈血栓を認めなかった。血液検査で抗カルジオリピン抗体は陽性で,プロテインS活性は45%に低下していた。抗凝固療法を行い,第27病日に軽快退院した。6週以降の抗カルジオリピン抗体も陽性であり,抗リン脂質抗体症候群と診断した。本症例はフェノチアジン系薬剤の服薬,抗リン脂質抗体症候群,プロテインS欠乏症など肺動脈血栓塞栓症を発症するリスク症例ではあるが,急性薬物中毒では発見されるまで長時間同一姿勢でいる場合があり,脱水と血流うっ滞により深部静脈血栓症のリスクとなる。そこで,当施設では急性中毒患者は肺動脈血栓塞栓症のリスク患者として弾性ストッキングを着用することにした。

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© 2006 日本臨床救急医学会
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