2006 年 9 巻 3 号 p. 260-269
(財)救急振興財団からの派遣で,米国の4都市のパラメディックの気管挿管に関する教育を視察する機会を得たので報告する。パラメディック養成の標準的カリキュラムは国が示しており,各教育機関でこれを改変して使用している。実習中の気管挿管実施数は,ビッツバーグ,マイアミで10例以下,ベリンガム,シアトルで20例以上であった。就業後,マイアミ以外では義務とされている気管挿管回数を下回ると不足分を手術室で実施できる。就業後の気管挿管成功率は,シアトル,ベリンガムでは95%以上であるのに対しマイアミでは66%で,これはパラメデイック学校在学中も就業後も,人体での気管挿管施行例数が少ないことが影響しているのではないかと思われた。実習時に発生した事故に対する補償は,基本的には指導者の保険でまかなわれている。本邦でも一人の救急救命士が実際に現場で気管挿管できる症例数は限られていると予想され,技術維持ができるようなシステムを構築する必要がある。