近年,医学教育ではコミュニケーションの重要性が再認識され,患者や医療職種間のコミュニケーション教育が導入されつつある。しかし,病院前救急医療における救急救命士及び救急隊員の教育においては,本格的なコミュニケーション技法には触れられていない。そこで,我々は救急救命士及び救急隊員を対象とした傷病者やその家族等とのコミュニケーションについての現状調査と救急救命士養成施設を対象とした教育内容についての現状調査を行い,理想的な病院前救急医療におけるコミュニケーション技法の体系的教育法の検討を図ることを目的とした。救急救命士,救急隊員の調査では,138名/190名(72%)がコミュニケーションスキルについて正しく学ぶ必要性を感じると回答した。救急救命士養成施設では, 8施設/18施設でコミュニケーション教育が行われていなかった。現在のコミュニケーション教育では充分でなく,より現実的な教育法の確立が望まれる。