日本臨床救急医学会雑誌
Online ISSN : 2187-9001
Print ISSN : 1345-0581
ISSN-L : 1345-0581
9 巻, 4 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
特集・救急隊員教育
  • 吉本 恭子, 田中 秀治, 高橋 宏幸, 安田 康晴, 前住 智也, 中尾 亜美
    原稿種別: 特集・救急隊員教育
    2006 年 9 巻 4 号 p. 312-319
    発行日: 2006/08/31
    公開日: 2024/02/23
    ジャーナル フリー

    Self e-learning programが民間の教育機関における救急救命士養成課程の学生に対して,主に現場経験から得られる傷病者観察・判断・処置の方法と適否や,傷病者の病態生理などの理解に有用であるかを検討するため,研究1としてICLSコース受講前の事前自己学習に用いた場合の学習効果,研究2として集合教育における効果の2つの検討を行った。この結果,研究1ではICLSコースの事前学習において,テキスト学習を行った学生よりもSelf e-learning programを行った学生の方が,より知識習得度が高かった(p<0.05)。研究2では,集合教育において,学生のSelf e-learning programを用いた講義に対する理解度,満足度ともに従来の講義に比べ高かった。Self e‐learning programは救急救命士養成課程教育に有用であることがわかった。

  • 鱸 伸子, 柳澤 厚生, 和田 貴子, 山内 亮子, 深澤 政富, 小池 秀海
    原稿種別: 特集・救急隊員教育
    2006 年 9 巻 4 号 p. 320-324
    発行日: 2006/08/31
    公開日: 2024/02/23
    ジャーナル フリー

    コーチングは相手の問題解決能力を引き出す双方向コミュニケーション技術である。救急救命士を目指す大学生のコミュニケーション能力を育成するために,コーチング・コミュニケーションのスキルを学ぶ実習を行い,実習前後における行動特性の変化を調査した。対象は救急救命士課程3年学生27名とし, 3ケ月間に3時間のロールプレイを中心としたコーチングの基本技術(傾聴,質問,承認,提案)を体得する実習を5回実施した。コントロール群は臨床検査技術学科学生25名とした。実習前後で情動知能指数(Emotional Intelligence Quotient,EQ)により行動特性を評価したところ,心内知性(自分の感情を調整し,やる気を引き出す能力),対人関係知性(対人関係を上手に発展させる能力),状況判断知性(的確な状況判断と適切な対処能力)のスコアが有意に高くなった(p<0.001)。この効果は学生自身が実習を通じてセルフコーチングがなされていたことによると推察した。コーチングを取り入れた実習の導入は,救急救命士を目指す学生の行動特性を伸ばす方法として有効な方法であった。

  • 高橋 貴美, 天羽 敬祐, 田中 秀治
    原稿種別: 特集・救急隊員教育
    2006 年 9 巻 4 号 p. 325-331
    発行日: 2006/08/31
    公開日: 2024/02/23
    ジャーナル フリー

    近年,医学教育ではコミュニケーションの重要性が再認識され,患者や医療職種間のコミュニケーション教育が導入されつつある。しかし,病院前救急医療における救急救命士及び救急隊員の教育においては,本格的なコミュニケーション技法には触れられていない。そこで,我々は救急救命士及び救急隊員を対象とした傷病者やその家族等とのコミュニケーションについての現状調査と救急救命士養成施設を対象とした教育内容についての現状調査を行い,理想的な病院前救急医療におけるコミュニケーション技法の体系的教育法の検討を図ることを目的とした。救急救命士,救急隊員の調査では,138名/190名(72%)がコミュニケーションスキルについて正しく学ぶ必要性を感じると回答した。救急救命士養成施設では, 8施設/18施設でコミュニケーション教育が行われていなかった。現在のコミュニケーション教育では充分でなく,より現実的な教育法の確立が望まれる。

  • 松園 幸雅, 松田 潔, 岩瀬 史明, 宮田 美穂, 宮崎 善史, 菊池 広子, 松本 学
    原稿種別: 特集・救急隊員教育
    2006 年 9 巻 4 号 p. 332-336
    発行日: 2006/08/31
    公開日: 2024/02/23
    ジャーナル フリー

    目的:救急救命士の再教育における病院実習の現状を調査し,現在の問題点,今後の展望について考察した。対象:山梨県立中央病院救命救急センターで病院実習を行った救急救命士のベ160人。方法:実習実績表をもとに,実習実績(経験症例),処置・検査の基本的手技の体験などを集計し,分析した。結果:外傷症例(58.9%)を中心に急病症例,心肺停止症例,急性中毒症例などを経験している。採血などの検体検査や画像診断を含んだ各種緊急検査(40.4%)や静脈路確保などの緊急処置(40.8%)を多く実施・経験している。緊急処置としては,静脈路確保や器具による気道確保についてはかなりの件数が実施経験されているが,一方では,電気的除細動の実施や,緊急カテコラミン投与の介助・見学は少なかった。結論:病院実習で経験される症例・基本的手技には,実際の救急活動との間に偏りが見られ,受け入れ医療機関はその実習内容を考慮したプログラムを構築すべきである。

  • 森本 文雄, 渋谷 正徳, 吉岡 伴樹, 藤芳 直彦, 鈴木 義彦, 島崎 淳也
    原稿種別: 特集・救急隊員教育
    2006 年 9 巻 4 号 p. 337-342
    発行日: 2006/08/31
    公開日: 2024/02/23
    ジャーナル フリー

    メディカルコントロールが始まり,救急救命士は2年間で128時間の病院再研修をすることとなった。多数の救急救命士に病院研修を提供するには,従来のプログラムでは問題が生じるため,担当医師が病院関係者(医師・ナース),消防機関および救急救命士から検討項目(研修時間,研修場所,人的資源,研修内容)について意見を聴取し,新たなプログラムを作成した。救急救命士の救急車乗車業務を配慮した, 4当直での診療参加型研修となった。放射線科医の協力を得て,腹部CT読影に関する画像診断研修も加わった。プログラム実施後,担当医師が意見を聴取し,病院研修担当者会議も開催し,関係者にフィードバックした。病院研修の目標が共有できないなど,問題点も出現しているが,お互いを理解しながらプログラムを改良することとなった。病院研修を前向きにとらえ,救急救命士の資質向上に寄与し,プレホスピタルケアを含む地域の救急医療が向上できればと考えている。

原著
  • 久保田 稔, 直江 康孝, 志賀 尚子, 中野渡 雄一, 久野 将宗, 小柳 正雄, 原 俊輔, 山本 修三, 加地 正人, 二宮 宣文
    原稿種別: 原著
    2006 年 9 巻 4 号 p. 344-347
    発行日: 2006/08/31
    公開日: 2024/02/23
    ジャーナル フリー

    近年,重症患者の蘇生,救命率は改善してきたが,その反面で蘇生後に脳死やそれに近い状態を経て亡くなる例も多く,予後を予測することは治療戦略を立てる上でもインフォームド・コンセントを行う上でも重要である。そこでわれわれは重症意識障害患者(100例)に対して電気生理学的検査(脳波,聴性脳幹反応,短潜時体性感覚誘発電位)を施行し,その結果と予後との関係を検討したので報告する。施行した各検査で全ての波形が出現していた症例の死亡率は約27%であったのに対し,1つ以上の検査で波形が消失していた症例の死亡率は1つで約62%,2つで約74%,3つで約98%であった。救命救急領域において重症意識障害患者の予後予測に電気生理学的検査は有用であった。

臨床経験
  • 第一報:小児科におけるパス導入の経験
    久保 実
    原稿種別: 臨床経験
    2006 年 9 巻 4 号 p. 348-352
    発行日: 2006/08/31
    公開日: 2024/02/23
    ジャーナル フリー

    小児科では一般にクリニカルパスは導入しにくいとされているが,当小児科での運用経験からその問題点と対策について検討した。最初のパスは小児市中肺炎のパスで,使用頻度が多く標準化しやすい疾患を選んだ。日めくり式,オールインワンパス形式など記録を工夫し,喘息パス,川崎病パスなども作成・運用している。患児の個別性や標準化の困難さがパス導入の最大の障害となるが,バリアンスを分析・評価し対応すること,アルゴリズムを作成することなど患者状態の変化に対応することで,小児科においてもパスを運用することができる。

  • 第二報:小児喘息治療における標準化とバリアンス分析
    久保 実
    原稿種別: 臨床経験
    2006 年 9 巻 4 号 p. 353-358
    発行日: 2006/08/31
    公開日: 2024/02/23
    ジャーナル フリー

    小児救急医療におけるクリニカルパスの例として小児喘息のパスをあげ治療の標準化とバリアンス分析を行った。小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2002に沿ってパスを作成した。その骨子は補液,アミノフィリン持続点滴,ステロイド静注および吸入療法であるが,カルテレビューによって投与法, 日数などを標準化した。バリアンス分析では多くの「変動」「逸脱」が見られた。その主なものは医師の理解不足や安静度の早期緩和,患者要因による退院日の短縮または延長であった。パス使用に関して若手医師の指導や安静度の見直しを必要としたがパスの大幅改訂を要せず,小児喘息パスは概ねパスどおり良好に使用された。

feedback
Top